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山で男を待っている…笑う山女/黒史郎・妖怪補遺々々

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2022年一発目は山の女は、八尺様のように〝山のように大きな女〟でした。そして今回も山の女ですが、また違う女怪を補遺々々しました!
ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」だ!
 

 文・絵=黒史郎 #妖怪補遺々々

山の女怪はオソロシイ

  山にいる妖怪には、人の女性の姿をしたものがあります。
 そういう妖怪には、人を食う、血を吸う、いろいろ吸う、見ただけで死ぬといった、恐ろしい影響を人間に及ぼすものがあります。肌は色白で、美人であり、山仕事をしている男に近づいて、その命を奪います。美しさは男を捕えるための罠なのでしょうか。

 名称に多いのは「山〇〇」。〇〇には「女」「姫」といった女性を指す語が入ります。
 各地に数ある山の女怪から、今回は「山娘」「神田山の山姫」「山女郎」をご紹介いたします。

 まずは、鹿児島県薩摩郡山崎村の山奥にいるといわれていた【山娘】。
 これと出遭った人の話があります。

 

 ある日、ひとりの樵が、山へ杉の木を伐りにいきました。
 仕事をしているうちに日が暮れてきてしまい、急いで終わらせて帰ろうと作業の手を早めていると、「にゃん」と、後ろで鳴き声が聞こえました。
 振り返っても猫はいません。
 提灯に火をいれて山を下りようとしますと、だれもいないはずの山中に、きれいな娘が立っており、にやりと気味の悪い笑みを浮かべています。
 きれいではありますが、口は耳元まで裂け、笑うたびに舌をぺろぺろと出します。しかも、その舌は娘の額にまでつくほど長いのです。
 樵は恐ろしさのあまり、提灯を投げました。
 すると、この娘は提灯を追っていったので、この隙に樵は転がるようにして山を下り、逃げ帰ったのだそうです。

 

 これは無事に逃げ帰れた人の話ですが、【山娘】と出遭い、にやにや笑って舌が額につくのを見てしまったら、その人はもう、命はないといわれています。
 また、舌が額についたときは、舌が邪魔をして目が見えなくなっているので、その隙に逃げなくてはならないともいわれています。

 子供を抱いて現れることもあり、人と会うと、その子供を持ってくれと頼むという話もあります。この子供を持ったら最後、その人は動くことができなくなり、【山娘】に食われてしまうのだそうです。
 そうならぬためには、子供を渡されても持った真似をし、もし提灯を持っていれば、先の樵のように火がついたまま投げるのです。それを【山娘】は追いかけるので、このあいだに逃げなければならないのです。

「にゃん」という鳴き声や、投げたものを追いかける様など、その正体を猫だとうかがわせるものがあります。

 

 馬鹿にする山姫

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