ウラメシヤ/読者のミステリー体験
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ウラメシヤ/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

ウラメシヤ

神奈川県 44歳 倉木茂男

 今からおよそ22年ほど前のことになります。私は、仕事の関係で昭和45年から約3年間、宮城県仙台市に移り住みました。当時、その地に新しく開設された営業所は、私を含む東京からの出向組3人と地元から参加してくれた人たちの男女8人の、計11人で運営されていました。
 私がその営業所のメンバー全員と、県内の秋保温泉郷にある二口渓谷という所にハイキングに出かけたのは、仙台に赴任した翌年の昭和46年の確か10月ごろだったと思います。
 それまで都会の雑踏に慣れきっていた私にとって、二口渓谷はまさに別天地でした。新緑の渓谷美に圧倒されて立ちつくせば、肌にさわやかな涼風が吹きつけて、ふと心が洗われる思いがしたことを今でもはっきりと覚えています。
 やがて適当な場所を確保した私たちは、各自が持参の弁当や飲み物を敷物の上にひろげ、楽しい宴を始めました。だれとはなしに持参したカメラを取り出して、互いに撮ったり、撮られたり。さらに場の盛り上がりに花を添えました。
 ここまでなら、どこにでも見られる光景といえます。しかしここから先が、さわやかなハイキングの思い出から、何やらわけのわからない黒い雲に覆われた重苦しい思い出へと変わっていくのです。

 私にカメラが向けられたので、立ち上がってポーズをとりました。すると、川の淵に立ったほうがいいとカメラマン。素人のくせに、背景がどうの、光線の具合がどうのと、なかなかうるさい。笑いながら、その要望に従って私は場所を移動すると再びポーズをとりました。そのときだれかが私に、こんなことをいいました。

「今、立っているその場所は、この上から投身自殺した人たちが叩き付けられた場所で、昔から自殺の名所になっていた所だ。そこらへんの岩や地面は、そういう人たちの血をたっぷり吸っている」

 私たちに同行していた現地に詳しい仕事仲間の口から出た言葉でした。
 一瞬、私はゾッと背筋に冷たいものを感じて思わず視線を足元に落としましたが、しかしすぐに気を取り直しました。
「そいつはいい。それじゃポーズはこれに限るな」
 私はおどけてそういうと、幽霊のポーズをとりました。例の、体を少し斜めにして両手を前に出し、手首をダラリと下げ、上目使いに「ウラメシヤ」というやつでした。ちょうどそこで、カシャリとシャッターが切られました。私のそんなジョークにみんなで大笑いでした。私もそのときは、みんなを喜ばせたことで大いに満足していたのですが……。

 それから数日後、そのときの写真ができあがってきました。それぞれが撮った写真を職場に持ち寄り、わいわい騒ぎながら、その一枚一枚を見ていきました。そのうち、ひとりが一枚の写真を指さして悲鳴を上げました。そばで覗き込んでいた者も青ざめています。みんなが近づき、私も行ってそれを見ました。それは、私の写真でした。例の幽霊のポーズをとった写真です。見た瞬間、茫然として思わず声を失ってしまいました。

 その写真には、確かに私は写っていました。
 しかし、それは、私の輪郭だけだったのです。
 顔や体、両腕などの中央は完全に透き通り、本来ならば私の姿の陰に隠れて見えないはずの背景の河原の岩や木々の小枝などが、くっきりと写し出されていたのです。
 まさにその瞬間、私の体は幽霊そのものになったかのようでした。

 翌日、それを写真店に持っていき調べてもらいましたが、原因は不明とのこと。その後、特に鑑定などうけることもなくアルバムにはさんだまま今日に至っています。


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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