ディープステイト対Qアノンという幻影 大統領選挙で読む現代アメリカ陰謀視点/宇佐和通
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ディープステイト対Qアノンという幻影 大統領選挙で読む現代アメリカ陰謀視点/宇佐和通

暴徒乱入による騒乱を経てようやく敗北を宣言したトランプ大統領。史上稀な混乱となった選挙戦を振り返り、現代アメリカを覆う「陰謀論VS陰謀論」を読む。
(2021年1月12日)

*2020年11月収録の「ムー公式超日常ポッドキャスト#1」とあわせてお楽しみください。

文=宇佐和通

アメリカ民主主義を脅かすトランプ大統領

 アメリカは今、本当の意味で革命前夜を迎えているのかもしれない。その背景に、敗北を認めずホワイトハウスを去ろうとせず、議会に暴徒を招き入れる要因ともなったトランプ大統領の存在があることは言うまでもない。

 2020年10月の終わり、とあるポッドキャスト番組の取材でミレニアル世代と呼ばれる20代のアメリカ人数人にインタビューをした際、“革命”という単語をたびたび耳にした。彼らは投票直前の時点で、トランプ大統領が選挙に負けてもホワイトハウスから出ていかない可能性が十分にあることを認識していたのだろう。アメリカに住んでいる人間なら、皮膚感覚的なもので理解できたのかもしれない。
 革命という言葉のニュアンスは、おそらく以下のようなロジックだ。アメリカ合衆国の根幹である民主主義のシステムの象徴といえる大統領選挙のプロセスを無視するトランプ大統領。ルールを無視する暴君を排除し、自由世界をリードする国家として恥ずかしくない姿を取り戻すためには革命を起こすしかない。
 話を聞いた時は「まさか」としか思えなかったが、今となっては日を追うごとにリティが強まっているシナリオであると言わざるをえない。そんな中、トランプ支持派の中でも独特の存在感を示し続けてきたQアノンと呼ばれるグループが再び注目を集めている。

人工知能によるQアノン”騒動”

 Qというハンドルネームの人物(あるいはグループ)が4chan(アメリカのイメージボード型SNS)に初めて現れたのは2017年だった。プロフィールには「アメリカ政府の機密情報にアクセスできる権限を有する」と記されていた。トランプ大統領を英雄視して支持し、過激な言葉遣いで対立候補を攻撃する姿を通してその存在がトランプ支持者に瞬く間に拡散し、演説集会などでTシャツや帽子、そしてバナーにQという文字が目立ち始めるようになる。Qの支持者はいつしか“Qアノン”と呼ばれるようになり、選挙戦の進行と共に勢力を拡大していった。
『ニューズウィーク』誌の2020年11月10日号によれば、Qの正体としてトレーシー・ディアス、ポール・ファーバー、コールマン・ロジャースという個人名まで特定されているが、この記事では最初のポストは2018年だったとなっている。ネット初登場の時期を考える限り、彼らがQムーブメントの本当の意味での始まりではないといえそうだ。

 その一方、IT分野に特化した緻密なフィールドワークで知られるリコ・ロホというリサーチャーの過去3年間にわたる検証によれば、Qムーブメントを生み出したのはAIにほかならない。ただし、直接的に関わったのは初期の書き込みだけで、その後は生身の人間が引き継いだと考えるのが妥当であるとしている。彼の言葉の向こう側に見えるのは、AIによって生まれたムーブメントの芽を人間が大きくした結果、現象が顕著化したという図式だ。そしてロホは、AIに持たせた方向性と人間の感情がシンクロする可能性を強調している。ツイッターやフェイスブックといった媒体で発信されるAIの方向性が、人間の感情にピンポイントな形で働きかけた結果、同調現象が起きるというのだ。

 最も大きな要因として、アカウント作成時に本人登録で趣味や嗜好に関する詳細なプロフィール設定が挙げられる。個人レベルの基本的なデータが様々な種類のマーケティングや調査に活用されることは言うまでもない。
 テキサス大学オースティン校メディアエンゲージメントセンター所属のプロパガンダ研究の専門家サミュエル・ウーリー氏は、自動化されたボットのネットワークから嘘のコメントや投稿をウェブ上に発信し、それを簡単に蔓延させられることを発見した。2016年大統領選が始まる数カ月前の時点の話である。SNSアカウントのプロフィールから得られる膨大で詳細な情報とボットのネットワークが持つ情報拡散機能を組み合わせれば、多くの人間の思考をある程度まで一つの方向に持って行くことも不可能ではない。特定の商品のプロモーション活動であれ大統領選挙であれ、事実上大差はないはずだ。2016年の大統領選挙では、フェイスブックのユーザー5000万人分の個人情報が不正使用されたという話もある。

”悪の”ディープステイトに対抗する”正義の”Qアノン

 話をQアノン・ムーブメントに戻そう。Qアノンは“ディープステイト”という闇の組織の存在なしには語れない。多くの人々にアピールするにちがいないインパクトがある名前だ。語感としては、ウォーターゲート事件のディープスロート(正体はニクソン政権のマーク・フェルトというFBI副長官)を彷彿とさせる。転じて新世界秩序=NWOとか、実際の政治でも使われるネオコン(ネオコンサーバティブ)のニュアンスも感じられる。
 ディープステイトは悪魔を崇拝する小児愛者の集団(主にエリート主義の民主党員や政治家、ジャーナリスト、エンターテインメント産業などの大物たち)が昔からコントロールしてきた集団であるという。メディアやエンターテインメントの圧倒的な力を通して、自分たちにあらがうトランプ大統領を陥れようとしている。こうした背景を信じて疑わず、決してぶれることなくトランプ大統領を応援している人たちがQアノンということになる。Qの書き込みの内容はそもそもディープステイトありきだったので、先に紹介したロホをはじめとして、ムーブメントの発火点がAIによって意図的に生み出されたとする意見は多い。

 Qアノンそのものをごく一般的な言い方で、しかもきわめてざっくりと定義するなら、“最新ネット陰謀論に洗脳された人たち”という言い方になるだろう。ちょっとひねった言い方なら、最新ネット陰謀論に基づく自己達成的予言に酔いしれる人たち。あるいは、ブラックマジック的な自己実現という形のスピリチュアリズムの一形態に傾倒する人たちと表現することもできるだろう。大統領選挙投票前に行われたアンケートの結果によれば、Qの主張を本気で信じている人はアメリカ国民の7パーセントに上ると言われている。アメリカの人口は約3億3000万人なので、ハードコアなQアノンの数は2300万人程度ということになる。
 実際の選挙では、現職大統領であるトランプ候補の獲得票数が7400万に達した。主流派メディアでは投票前から“隠れトランプ”という言葉がよく使われていたが、トランプ候補に投票した人たちの内訳は、“隠れ”が“ビリーバー”であるQアノンの推定人数の2倍以上だったことになる。

 Qアノン信仰の根底にあるのは、正義の代名詞としてのトランプ大統領VS闇の権力というわかりやすい対決機軸にほかならない。これを事実として認識している人たちが2300万人いる。加えて、今のアメリカの混沌を解決できるのはトランプ大統領であると感じた5100万人の“隠れ”が乗っかった。
 正義VS悪というわかりやすい対決機軸を基にした投票行動は、大統領選挙と同時に行われた上院議員選挙にも垣間見られた。たとえばデラウェア州の上院議員選で善戦した共和党のローレン・ウィッキー候補は、選挙活動の当初から自らQアノンであることを声高に訴えていた。
 ただ、当然のことながら冷静な視線を向ける人たちもいる。Qアノンの“教義”である陰謀論があまりにもぶっ飛びすぎているため、同じくトランプ支持派として知られるミリーシャ(民兵組織)も進んで関わろうとはしなかった。
 しかし、バイデン候補の次期大統領就任が決定的になるにつれ、さらに一つ上のレベルの陰謀論が目立つようになってきている。それは“インビジブル・ガバメント(見えざる政府)”という概念だ。

”見えざる政府”という疑い

 見えざる政府に関する言葉を残した歴代大統領も決して少なくない。アメリカ合衆国という国家が、国民が知り得ない仕組みによって“運営”されている事実を明らかにしようとした政府高官もいた。見えざる政府の目論見は邪悪としか形容できない。
 こうした考え方の根源は、アンドリュー・ジャクソン政権までさかのぼることができる。つまり、闇の組織は1836年から現在まで存在し続けていることになる。自己中心的な目的を実現するためにアメリカ合衆国政府を意のままに操り、共和党も民主党も支配下に収めている。いや、事実上“所有”しているといっていい。自分たちの存在を隠しながらさまざまな表の顔を使って活動し、政府から行政機関、教育界、法曹界、そしてメディアを利用している。

「政府内に、国民をしのぐ勢力が台頭した。さまざまな目的をひとつにまとめ、圧倒的な資金力を背景にした強い結束力の勢力である」―ジョン・C・カルホーン(副大統領 1825~1832)

「表面的な存在でしかない政府の裏側に、国民のことなど全く意に介さないまま自らの目的だけのために行動する見えざる政府がある。腐敗した実業界と腐敗した政界のつながりを断ち、見えざる政府を破壊することが責務である」―セオドア・ローズヴェルト

「商業・製造業の世界で活躍する名士の中に、何かに恐れている人々がいる。何を恐れているのか。決して表に出ることはないが、きわめて組織的ですべてを見張っている存在だ。その存在を非難することはできない」―ウッドロウ・ウィルソン

 認知的不協和という言葉がある。矛盾や背反する信念を同時に抱くことから生まれる不安感を意味する言葉だ。アメリカ国民は、建国当初からこうした概念に悩まされ続けてきたのかもしれない。
 アメリカ政府は国民のために存在し、自由世界の守護者にほかならない。こうした絶対的かつ妄信的な信頼感がある限り、アメリカ政府が邪悪な影に覆われることなどありえない。
 しかし実際はどうだろうか。
 2020年の大統領選挙では、アメリカ政府そのものを疑う陰謀論を真実であると信じた人、そう考える人たちに支持される現職大統領に1票を投じた人たちが7400万人もいたことになる。

 メディアにおいて、コンスピラシー・セオリー=陰謀論がしばしば武器として用いられる事実は、あえて指摘するまでもないはずだ。トランプVSバイデンというアメリカ大統領選挙における対決機軸の向こう側にも、底知れない広がりを見せる陰謀論がうごめいている。

ホワイトハットとQアノン

 ごく最近、「ホワイトハット」という組織が新しい要素として盛り込まれるようになった。ホワイトハットは、トランプ大統領と関係の深い秘密結社的な色合いの組織と位置づけられている。
 2016年の大統領選においてトランプ候補をサポートして当選させた後も、一般人が決してわからないところでディープステイトのような悪の組織と熾烈な戦いを繰り広げている。その役割を“国際金融警察”と形容する人もいる。

 秘密結社的な組織であると言いながらも、ホワイトハットにはウェブサイト(https://whitehatsreport.com/about-us/)がある。これによれば、設立は2010年となっている。サイトのトップには次のような文章が記されている。 
“われわれは、真実を報告し、企業的性格の政府の詐欺行為の暴露を通して世界的レベルの覚醒に協力するために結束したグループである。主流派メディアが報じることを拒否する情報を提供するわれわれのニュースは、高レベルの内部情報源から得たものである”

 2010年頃に設立されたということは、Qの書き込みよりも早かったことになる。Qはネット世論におけるホワイトハットのいわば“実働部隊”というニュアンスで生まれたという考え方をする人もいるようだが、無理はないだろう。

「ホワイトハットとQから成る勢力」と「ディープステイトとインビジブル・ガバメントチーム」の対立構造。

 今のアメリカの仕組みを図式化すると、そんなふうになるのかもしれない。どのような経緯でこうした図式が出来上がったのか。アメリカ建国時から続いているものなのか。あるいは近年になって確立したものなのか。それをつまびらかにするためには、より多くの情報が必要になるだろう。
 最近になって際立っているGAFA企業に対する連邦政府のきつい当たり方や、2020年を通して大きなうねりとなった「ブラック・ライブス・マター」運動にも、ヒントのかけらが隠されているかもしれない。

 第46第アメリカ大統領が正式に就任するのは2021年1月20日。トランプ大統領が何らかの方法で居座り続けるにせよ、バイデン新大統領が新しい主になるにせよ、アメリカ政府の舞台裏ですべてを操る“総合プロデューサー”とそれに対抗する勢力の暗闘は、形を変えながら続いていく。


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