
70年代”人類滅亡”ブームの定番シナリオ/初見健一・昭和こどもオカルト回顧録
昭和の時代、少年少女がどっぷり浸かった怪しげなあれこれを、“懐かしがり屋”ライターの初見健一が回想。
前回につづいて、世界を覆ったコロナ禍の中で振り返った「あのころの終末」シリーズをお送りします。(前回はこちら)
文=初見健一
70年代の「世界の終わり」ア・ラ・カルト
いまだにコロナの猛威は収まらず、アフリカで発生したバッタの大群は食糧を喰い荒らしながらインド、さらには中国へと進んでいるそうで、まさに「エクソシスト2」状態。おまけにアメリカでは「これはジョージ・A・ロメロのゾンビ映画なのか?」と思ってしまうような大暴動が起きたりして、世界中に「終末気分」が蔓延しているかのようである。
先日は東京上空を「謎の火球」が飛翔し、夜中に仕事していた僕は窓を揺らす衝撃波にド肝を抜いてしまった。疫病、蝗害、民衆の暴動、不吉な流星……と、太古の昔から語り継がれる神話的・古典的な「世界の終わり」の予兆が、まるで束になって押し寄せてきたようではないか。
というわけで、今回の本コラムも前回に続いて「70年代終末ブーム」を回顧しつつ、現在進行系の「終末気分」をさらに盛りあげていきたい(別に現状をチャカしてるわけではなく、こんなふうに事態を娯楽化して楽しまないとマジでダウナーな精神状態になってしまいそうなのである……)。
さて、70年代の子ども文化を席巻した「終末ブーム」の全盛期、多くの児童雑誌・書籍が盛んに「世界は終わる!」という衝撃的な記事を出しまくっていたわけだが、別にただ「終わる! 終わる!」と騒いでいたわけではない(確かに「よくわからないけどとにかく終わる!」みたいな主張の記事も多かったが)。一応は「なぜ終わるのか」「どのように終わるのか」みたいなことを、それなりに「科学的に検証しました」というノリのものが主流だった。この「かろうじて科学読み物になっている」というバランスが非常に重要で、当時の男の子たちもこの「見世物的娯楽と科学の中間」といった部分に心をつかまれていたのだと思う。
同種の記事が無数に書かれたわりには、「なぜ終わるのか」についてはどの記事も似たりよったりで、ほとんど同じような趣旨の記事を多くの出版社が手を変え品を変え掲載していた。こうした図解形式のイラスト入り記事は、挿絵師が変わればガラリと印象が変わる。だから同じような内容の記事が短期間に集中的に掲載されても、子どもたち飽きもせずに楽しめたのである。
「終末のシナリオ」を内容的にまとめてしまえば、おそらく10種に満たなかっただろう。この10個程度の「世界の終わり方」を、当時の子どもたちは繰り返し叩き込まれていた。「世界の終わり」に至る恐怖のア・ラ・カルトである。
世界が終わる「7つの理由」
では、当時はどういう要因で「世界は終わる!」と考えられていたのか? これについては非常に簡潔にまとめられた小松崎茂画伯の有名な図解がある。
1968年に少年マガジンに掲載された「世界大終末」と題する「大図解」記事のプロローグ部分、「恐怖!地球の7大終末」だ。企画・構成はもちろん「大図解」という当時の子ども文化を象徴する表現スタイルを「発明」した伝説の編集者・大伴昌司であることは言うまでもない。

「恐怖!地球の7大終末」。1968年『週刊少年マガジン』巻頭に掲載された『世界第終末』の一部。いくつもの種類の「世界の終わり方」を小松崎茂がイマジネーション豊かに描ききった傑作企画。
70年代”人類滅亡”ブームの定番シナリオ/初見健一・昭和こどもオカルト回顧録
300円
