念入りCD/読者のミステリー体験
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念入りCD/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

念入りCD

神奈川県 32歳 柏田浩二

「あの気味の悪い声の入ったCDのこと、覚えてる? あれね、O君が持ちだしたらしいわよ」
 ぼくは半年ほど前まで、某大手CDショップ・チェーンで働いていました。先日、その店の元同僚のTさんとばったり出会い、お茶をすることになったのでした。
 彼女の話では、やはり以前、同じ職場にいたO君が、昨年11月にバイクで交通事故を起こしたというのです。命に別状はないものの足を骨折するなどの重傷で、現在も入院中だとか。そのO君が、まさかあのCDを持ちだしていたとは……。

 ぼくがCDショップに勤めていたころにノリちゃんという常連のお客さんがいました。近所の高校に通う、とても明るくて素直そうな感じの、かわいらしい女の子でした。
 ノリちゃんには何人かお気に入りのミュージシャンがいましたが、なかでも「アジアの歌姫」と呼ばれるAの大ファンで、新譜が出ると、アルバムのみならず、マキシ・シングル、DVDなどもすべてうちの店で買っていました。
 そんなある日のこと。Aの新しいCDの発売日が決定しました。ところが、いつもなら真っ先に予約に訪れるノリちゃんが、なかなか姿を見せません。
 やがてメーカーから、Aの新曲のサンプルが届き、店内に流すことになりました。
 すると、従業員のKさんが、
「このCD、変な音が入ってない?」
 といいだしたのです。
 そこで、Kさんが指摘する間奏部分を注意深く聞いてみると、確かに人の囁き声のようなものが入っています。それはAの声でもコーラスでもなく、ノイズでもありませんでした。店長に報告して、他店にも問い合わせましたが、他店のサンプルにはそんな怪音は入っていないとのことでした。
 気になったぼくとKさんと店長の3人は、営業終了後、改めて大きな音でそのCDを聞いてみることにしました。シャッターを下ろし、客がひとりもいない店内に大音量のAの歌声が響きます。
 やがて──。
 その声が聞こえた瞬間、ぼくは総毛立ちました。店長もKさんも凍りついたように固まっています。
「どうして……大好き……死にたくない……痛いよ……」
 呻くような、絞りだすような、途切れ途切れの女の声でした。しかもそれは、なんと、あのノリちゃんの声にそっくりだったのです!
 それから数日後、私たちは、すでに2か月ほども前にノリちゃんが交通事故で亡くなっていたことを知りました。あるいは、不慮の事故によって若い命を絶たれた彼女の無念の想いが、大好きなミュージシャンのCDに宿ったのでしょうか?

 その後──行方不明になっていたそのCDを無断で持ちだしたというO君が、彼女が事故死したのと同じ十字路で事故を起こしたのです。とても、偶然とは思えません。


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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