血が出るだけ/読者のミステリー体験
見出し画像

血が出るだけ/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

血が出るだけ

愛知県 44歳 長瀬久美子

 あの事件は、私が小学校1年生の初夏のころに起きた。
 昼休み、体操服姿で友達ふたりと校舎の渡り廊下を走っていると、突然、目の前でビシャビシャという音がした。驚いて立ち止まり、次の瞬間、ギョッとした。
 信じられない気持ちで、その場を食い入るように見つめていた。
 なんと、渡り廊下に敷いてあるスノコ板一面に鮮血が飛び散り、その通路沿いの壁にも、何本もの血の筋がたれていたのだ‼
 何が起きたのか、まったくわからなかった。だが、そばにいた友人のひとりが悲鳴をあげながら、私の手を指した。
 エッと思って見ると、私の左手の親指の先から、ボタボタと血がたれていた。
 私は、驚くよりも不思議な気持ちで、真っ赤に染まった自分の左手の親指を見つめた。
 左の先端の、アーチ状になった最上部の2ミリほど左横に、小さな穴が開いているのがわかった。そこから鮮血がジワジワと、盛り上がるように湧きだしていた。

 友人ふたりが、呆然としている私の背中を押すようにして保健室に連れていってくれた。
 保健の先生がいないので、友人の知らせを聞いて教頭先生が駆けつけてきてくれた。 ところが、教頭先生が血だらけの私の指を洗うと──どうしたことかさっきあったはずの穴が、きれいに消えていたのだ‼
 どこにも傷などはなかった。刺し傷はおろか、切り傷ひとつない。
 そんなはずはないと思い、必死に目を凝らしたが、無駄だった。皮膚そのものに、まったく異常は見られなかった。
 それだけではない。
「痛みは?」
 と、教頭先生に聞かれて、初めて気づいた。私は最初から、まったく痛みを感じていなかったのだ‼
 あれだけ、渡り廊下のスノコ板や壁に鮮血を飛び散らせ、その場にいた友人たちの服まで派手に血で汚したというのに……!?

 教頭先生や友人たちが、しきりに首をひねった。それでも一応、教頭先生は、その左手親指の先に包帯を巻いてくれた。そして私は、まさにキツネにつままれたような気持ちで保健室を出た。
 ところが、変事はその日のうちに再び起きた。
 トイレで用を足し、立ち上がった瞬間だった。突然、包帯を巻いていた指の先端が熱くなり、見る間に包帯に血がにじんで広がったのだ。
 すぐに保健室に行ったが、結果は同じだった。鮮血に染まった包帯を取ってみると、指に傷らしいものはなく、私はまったく痛みを感じていなかった。

 それからしばらくは、左手親指のことが気になって、まともに友人と手をつなぐことも荷物を持つこともできなかった。それどころか、軽くこぶしを握ることさえ、怖くてできなかった。左手親指から、また血が噴きだすのではないかという恐怖は、私をかなり長いこと苦しめた。
 原因は、今でもわからない。なぜ突然、血が噴きだしたのか。カマイタチなら傷は残るはず、痛みもあるはずだ。その後、二度と同じことは起きていないが……。

(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

★「ムー」本誌の特集やオリジナル記事が読めるウェブマガジン「ムーCLUB」(月額900円)の購読はこちらから。

この続きをみるには

この続き: 0文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
マニアックなロングインタビューや特異な筆者によるコラム、非公開のイベントレポートなど、本誌では掲載しにくいコンテンツを揃えていきます。ここで読んだ情報は、秘密結社のメンバーである皆様の胸に秘めておいてください……。毎月30~40本投稿あり。

ムー本誌の特集記事のほか、ここだけの特別企画やインタビュー記事、占いなどを限定公開。オカルト業界の最奥部で活動する執筆陣によるコラムマガジ…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ムーPLUS

ネットの海からあなたの端末へ「ムー」をお届け。フォローやマガジン購読、サポートで、より深い”ムー民”体験を!

いいことありますよ!
スーパーミステリー・マガジン「ムー」の公式サイトです。 ウェブマガジン「ムーCLUB」にて極秘情報を配信中。世界の謎と不思議をご案内します。 ※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを禁じます。