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数珠の覗き穴/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

数珠の覗き穴

沖縄県 54歳 上運天真次

 寺や仏具店などで販売されているお守りグッズに数珠形のブレスレットがある。ひときわ大きい珠の中に干支が描かれており、小さな穴からレンズを通して見えるようになっている。これは、そのブレスレットにまつわる不思議な話だ。
 1997年の夏、会社での私の部下であるKさんの奥さんが、原因不明の病気で一日たりとも薬が欠かせない状態となった。
 そのKさんが、ある日、仏具店で自分の干支の入ったブレスレットを買ったあと、覗き穴を見ると、店で見たときはなかった汚れがついていた。干支の部分が黒いマジックで斜めに消されたようになっているのだ。すぐに彼は、細く丸めてツバをつけたティッシュの先を穴に入れて汚れを落とそうとしたが、まったく消えなかった。
 そんな彼に、私は、
「難病で苦しんでいるのは奥さんなのに、自分の干支のものを買ったりするからだ。明日、奥さんの干支のものを買ってあげなさい」
 と、いってやった。彼は、素直にそうすると答えた。
 それからしばらくして、彼が驚きの声をあげた。
なんと、覗き穴の汚れが、すっかり消えているというのだ。もちろん、彼は何もしていないという。私たちはまるでわけがわからなかった。
 翌日、彼は奥さんの干支の入ったブレスレットを買ってきた。そこで奥さんの話が出たのだが、彼がいうには、彼ら夫婦は第1子を流産、第2子を出生後数日で亡くして、地域の風習として、その子供たちを屋敷内に埋めたそうだ。しかも、よく聞けばその場所は、今はコンクリートの土間になっているという。
 私は、それを聞いてびっくりして彼にいった。
「なんてムチャなことを。さっそく明日、コンクリートを撤去して、夫婦そろって、亡くなった子供たちにお詫びしなさい」
 翌週、彼は私の指示通りに、コンクリートを撤去して供養したと報告してくれた。私は、これで必ずや奥さんの病気も快方に向かうだろうと安心し、
「どれ、きみのブレスレットを見せてみろ」
 といって、彼からブレスレットを受け取り、何気なく、その覗き穴を覗いてみると――なんと、レンズを通して見えるその小さな世界の周囲一面に、金粉がちりばめられて輝いていた。


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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