
包帯怪人トンカラトンの増殖/吉田悠軌・怪談解題
前号、オカルト探偵の調査によってみえてきたトンカラトン誕生前夜のようす。だがその先にはさらに大きな、怪談文化的バックグラウンドの広がりがあった。
恐怖の包帯怪人の根は、平成をはるかにさかのぼり、終戦直後にまで伸びていたのだ。
文=吉田悠軌 #怪談解題

吉田悠軌(よしだゆうき)/怪談サークル「とうもろこしの会」会長、『怪処』編集長。今回の写真は「学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!」第1巻とともに。
トンカラトンに先がける「恐怖の包帯男」たち
『学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!』(以下『花子さん』)によって、全国の子どもたちのトラウマとなった怪人「トンカラトン」。実はそこに、ネタ元となる特定地方(九州北部?)の噂があったのではないか……というのが前回の捜査内容だった。
それはそれでロマンのある話なのだが、今回はもっと視点を広げてみよう。トンカラトンというキャラクターが人気を博し、今や現代妖怪の一員としてすっかり定着したのは、それを受け入れる素地があったからではないか。
全身包帯姿で人を襲うキャラクターから連想されるのは、もちろんまず「ミイラ男」がある。
『ミイラの復活』(1940年)からのユニバーサルフィルム、その設定を引き継いだハマーフィルムにおける、一連のミイラ男映画シリーズで主役を張りつづけたミイラ男「カリス」こそ、包帯怪人の元祖であり、われわれのイメージに決定的影響を与えた存在なのは間違いない。
漫画『るろうに剣心』の悪役「志々雄真実(ししおまこと)」も忘れてはならないだろう。漫画史上に刻まれるべき傑作キャラクターデザインだが、全身包帯に日本刀という点はまさにトンカラトンそのもの。ただし志々雄真実の登場は『花子さん』の3年後。『剣心』側がトンカラトンの影響を受けて誕生したとも考えられる。
もっと直接、トンカラトンとつながるであろう現代怪談や都市伝説を探っていこう。
包帯怪人トンカラトンの増殖/吉田悠軌・怪談解題
200円
