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「東京タロット美術館」オープン! 占星術研究家・鏡リュウジが貴重なコレクションを拝見

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JR総武線・浅草橋から徒歩3分。閑静な住宅街の一郭に2021年11月、「東京タロット美術館」がオープンした。タロットカードをアートとして展示する美術館は、もちろん日本初。鏡リュウジ氏にガイドをお願いした。

◉神秘主義の世界◉ 文=山河ゆい 写真=小澤正朗

館内の様子。 常時約500種類のタロットカードが展示されている。

ゆったりとした空間に常時500種類を展示

 「タロットカード」と聞いて、あなたはどんなことを連想するだろうか。占いの道具、何やら神秘的な西洋のカード、下手に使うと呪われる……!?

 2021年11月、かつては花街として知られた東京・柳橋に「東京タロット美術館」が誕生した。その名のとおり、タロットカードをアートとして紹介するという意図がある。床面積約130平米、2LDKのマンションがふたつ入るくらいの空間には常時約500種類のカードが展示されている。なかでも選りすぐりの逸品は、美しく並べて額装された状態で壁を飾る。

 この美術館の魅力について、鏡リュウジ氏はこう語る。
「タロットの美術館というのは、もちろん日本初ですし、世界的にも非常に珍しい。ベルギーにもひとつありますが、そこは個人的なコレクションを陳列する博物館です。
 カードを見て、楽しんで、買えるというのもいい。ある種、ショールーム的な役割と美術館としての機能を備えていると思います。空間がゆったりとつくられていて、お茶もいただけるので、ミュージアムというより、ゆっくりと過ごせるギャラリーカフェのような性質を備えていますね」

受付時にカードを1枚引く。おみくじ的な楽しさ。カードの意味が一覧になったシートも一緒に受け取る。

「お茶」というのは、洒落たガラスの器に注がれた八ヶ岳の野草茶で、来館者にもれなくサービスされる。館内には自由に閲覧できる関連図書や、実際に触れて、使い勝手を確認できるカードが22種類、さらには図書館の閲覧席のようなフリースペースも。本やカードを手に取り、椅子に座って熱心に眺める来館者は少なくない。

22枚の大アルカナが一枚ずつ額装されている。

 東京タロット美術館を運営するのは、ニチユー株式会社。1946年に創業した老舗であり、日本ではじめてタロットカードを輸入販売した会社として、占い業界では有名だ。現在では、タロットの保有数が約3000種類、トランプは約5000種類と、世界一を誇る。

 館内に展示するカードは、同社が保有する約3000種類のなかから選ばれ、折に触れて入れ替えが行われる。そのため、少し時間を置いて再訪すると、新しい発見があるはずだ。

金色のゴージャスなカードを拝見。鏡氏もはじめて見るカードだったという。

製作に17年をかけた話題のマルセイユ版も

 タロットカードを美術品として鑑賞する? どうもピンとこないという人は、この記事に掲載した画像を虚心坦懐に眺めていただきたい。

製作に17年を要したという「タロット・デ・マルセイユ・エディション・ミレニアム」。

 たとえば上記は、マルセイユ版タロット(後述)の復元を多く手がけるフランスのグラフィック・デザイナー、ウィルフィド・オードゥワン氏が、17年の歳月を費やして完成させた「タロット・デ・マルセイユ・エディション・ミレニアム」だ。同氏は哲学、美術史、神聖幾何学、宇宙論についても研究を重ね、マルセイユ版タロットは神聖幾何学をベースにしているという考えのもと、カードのデザインを練りあげた。

「ダリのタロット」とセットになっている解説本。鏡氏の向かって右側にカードが展示されている。
大アルカナをテーマにしたオリジナルのアクセサリー。
神秘思想家のロバート・ワンがユング心理学を解釈し直して製作した「ユンギアン・タロット」。カード名や番号が記されていないのが特徴だ。

 次は、1770〜1775年ごろにベルギーのフランドル地方で製作された「ヴァンデンボール・バッカス・タロット」の復刻版である。

1770〜1775年ごろにベルギーのフランドル地方で制作された「ヴァンデンボール・バッカス・タロット」の復刻版。

 大アルカナ5番「教皇」のカード(画像中、最上段の右から3枚目)が、ローマ神話の酒神バッカスの姿になっていることから、この名がついた。

 なお、マルセイユ版タロットとは16世紀以降、ヨーロッパで大量生産されるようになった木版のカードの総称で、版独特の素朴な絵柄が特徴だ。細部についてはさまざまなバリエーションがあるが、基本的な絵柄は一致している。

 もともとタロットカードは、15世紀ごろに貴族のゲーム用カードとして誕生したといわれる。もちろん当時は一枚一枚のカードが手描きで製作され、金箔をふんだんに施すなど、豪華なつくりのものがあった。
 その後、印刷技術が発達すると、それを追い風に、庶民の間にも広がりを見せていった。マルセイユ版はその筆頭格であり、現在、世界中で広く親しまれているタロットカードでもある。

 ニチユー株式会社代表・佐藤元泰氏によれば、ここ数年はマルセイユ版への注目が高まり、さまざまな復刻版や新たなマルセイユ系タロットが登場しているという。

一点ものの価値ではなく流通するすべてが本物

 美術作品といえば一点もののイメージが強いが、タロットは違う。それも魅力のひとつだと鏡氏はいう。

「タロットは、そもそも印刷を前提とした複製品としてつくられています。だから、原画に価値があるわけではなく、複製品が本物です。本物を入手できるというのは、だれにとっても嬉しいこと。一点しかない美術作品だったら、買うにしても鑑賞にするにしてもかなり敷居が高いけれど、タロットはそうではありません」
 また、鏡氏が昔読んだ書籍の中に、印象的な言葉があったそうだ。
「その本には、タロットは最高級の視覚芸術とはいえないけれども、素朴で魅力的なアートであると書かれていました。確かにそのとおりでしょう。ファインアート(美の表現を目的とする視覚芸術)とは違う魅力をもったアートとしての作品群。そう考えるといいのではないでしょうか」

 日本の漫画やアニメも同じような位置づけかもしれない。かつては美術というカテゴリーで語られることはなかったが、近年では、高度な作画技術や表現技法を駆使したアートとして捉えられるようになった。今やフランスのルーブル美術館も、漫画を絵画・彫刻・映画などと並ぶ「9番目の芸術」と認識している。

芸術家の感性を刺激!内省のためのツールにも

 じつは、タロットに魅了され、オリジナルの作品を生みだす芸術家は多い。シュルレアリスムの巨匠、サルバドール・ダリもそのひとりで、全78枚を描き下ろした「ダリのタロット」を発表している。また、女性の現代アーティストとして人気の高いニキ・ド・サンファルは、大アルカナ22枚をテーマに取り入れた「タロット・ガーデン」をつくっている。こちらは、カードではなく「庭」だ。

 大アルカナとは、全78枚のタロットカードのうち22枚を占める絵札の総称だ。残り56枚のカードが棒・杯・剣・金貨という4つのスート(ひとそろいの意)に分かれ、トランプに似た構造をもつのに対して、大アルカナには一枚ごとにテーマが異なる。0番の「愚者」にはじまり、21番の「世界」が最後を飾る一連のカードにはキリスト教の美徳や神話のモチーフなどが散りばめられ、芸術家の感性を刺激する格好の素材となっている。

 同時に、そうしたテーマはまた、われわれひとりひとりが自分自身を見つめ直すテーマにもなり得る。

 ニチユー株式会社の佐藤氏はいう。
「タロットカードは、たんに占いの道具としてだけではなく、自己との対話のツールとして、また、その芸術性や背景にある文化・歴史を楽しむ大人の嗜好品としての役割を担えるものだと考えています。展示を通してタロットカードの美しさや奥深さに触れ、自分の内面に耳を澄ますことで世界が広がっていくすばらしさを皆様と共有できることを願っています」

 今後はタロットカードの「図象学」に焦点を当てた講演会や、文化人類学的なアプローチからのワークショップなども開いてみたいそうだ。
 なお、来館は完全予約制。「東京タロット美術館」のウェブサイトから申し込みが可能だ。

フリースペース。ここで本を読んだり、カードを広げたりできる。
展示されているのは約500種類だが、それ以外の所蔵カードも、このカタログで見ることができる。

東京タロット美術館
◆所在地:東京都台東区柳橋2-4-2Ubase浅草橋6階
◆開館時間:平日10:00〜19:00土曜日9:00〜18 : 00(ウェブサイトからの予約制) 
◆入館料:500円


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