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祝Steam版配信! “悪魔は2度生まれる”アマラ深界への下降と黙示が照らすものとは?『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER』Steam版 配信記念コラム/藤川Q

『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER』を語らせると止まらない怪人編集者・藤川Qが、Steam版を祝して再登場!

文=藤川Q #ムー通

*本稿を読むと、以下の点が理解できます。ネタバレはありませんのでご安心ください。
・『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』Steam版の概要と魅力
・アマラという言葉についての神話・伝承、イメージソース
・アマラ深界に関する、インド哲学やヨハネ黙示録的なエッセンス

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悪魔は2度生まれる

 神と悪魔に翻弄される人間存在を描く名作RPG『メガテン』こと『真・女神転生』シリーズ。2020年には、ナンバリングタイトル3作目にして屈指の名作と名高いPlayStartion2用ソフト『真・女神転生Ⅲ-NOCTRUNE マニアクス』が、最新ハードに対応した『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』としてHDリマスター化されたばかりだが――この度、2021年5月25日から、新たにシリーズで初めてPCのゲームプラットフォームSteam用の配信も開始された。
『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』は、『マニアクス』での追加要素もすべて収録しつつ、美しいHD映像は無論のこと、ボイスなどによる音響演出や、さらに遊びやすく慈悲深い難度も用意されるといった決定版的な作品。
 ちなみに、ムー通でも初のムー民度(ムー民にふさわしいゲームの度合いを示す独自指標)★5を獲得した記念すべき逸品でもあるだけに、Steam版でプレイのすそ野が広がることは、とてもうれしいことだ。

『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』は、長らく神話をモチーフとした作品を作り続けてきたアトラスにしか描けない、“創世”のダイナミズムを体感できる稀有なRPG。Steamで本作を新たに遊んでみたいけれど、どんなゲームなのだろうと気になっている方は、ムーPLUSにてファミ通とのコラボコーナー“ムー通”にて、Nintendo Switch版とPlayStartion 4版の発売時に本作の概要と、唯一無二の魅力について解説している記事があるので、そちらもどうぞ。

 さて、文字通りSteam版の配信によって、2度目の誕生を迎えた『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』だけれど、これはなかなかに感慨深いことのように思える。というのも、PlayStartion2で発売されたオリジナルの『真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE』もまた、後に数多の新要素が追加された『真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE マニアクス』の発売という、2度目の誕生を経験していたソフトだったのだから。

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PS2版『真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE マニアクス』のパッケージ。

“悪魔は2度生まれる”――これが、『真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE マニアクス』発売当時のキャッチコピーだった。このコピーからは、『マニアクス』で追加された“アマラ深界”を舞台とした新たな物語が、“悪魔の再誕”をテーマとしていることと同時に、新バージョンの『マニアクス』の発売といったダブルミーニングを読み取れる。

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アマラ深界。血や細胞を思わせる有機的な風景もまた、胎内巡りのようでもある。

 この度の『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』Steam版の配信開始もまた、ある意味では”2度目の誕生”にほかならない。

 本稿では、そんなSteam版の配信を祝して、ここはひとつ、かつて『マニアクス』で追加された深淵なる“アマラ深界”についての考察をお届けしたいと思う。

Steam版『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』購入は上記から。

アマラ深界への下降と黙示録

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ボルテクス界で出会う、喪服の老婆と金髪の少年。

『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』は、創世のための熾烈なるバトルロワイヤルが描かれる。退屈な日常で目にする風景は、“東京受胎”により、奇妙な球体状の世界――“ボルテクス界”と化してしまった。それと同時にあなたは、謎の少年と老婆との邂逅でその身を“悪魔”にされてしまう。次の世界を創世するための子宮内を彷徨しながら、その力をどのような創世のイデオロギーにゆだねるのか――

 本作には、そういった本来の道から外れた、もうひとつの物語が、本稿の主題である“アマラ深界”を舞台装置として上演されることとなる。アマラ深界は、ボルテクス界とは異なる深淵なる場所として登場するのだが、ここは、喪服の淑女と車椅子の老紳士のもと、“とある目的”のために無数の悪魔が集う、さながらミルトンが『失楽園』で描いたパンデモニウム=万魔殿かのような穢れた地なのだ。

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 あなたは悪魔の肉体に人の心を宿した“人修羅”として、一度はこのアマラ深界を訪れ、喪服の淑女と車椅子の老紳士と出会うだろう。彼らからは、ボルテクス界にてユダヤのセフィロトの樹にちなんだ名を冠する10本のメノラー(燭台)を集めてほしいとのリクエストを請けることになる。

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 だが、各メノラーは死の化身であるかの如き“魔人”が所持しており、すべてを手にするには、死闘を潜り抜けなくてはならない。

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 また、アマラ深界そのものが、下降を拒む無数の罠が待ち受ける広大なる迷宮であり、踏破が非常に困難な死地でもある。

 しかし、死線を潜り抜けてメノラーを手にし、アマラ深界に舞い戻るたびに、あたかも舞台を気取るかのような趣向を以て、喪服の淑女がボルテクス界が存在する意味や、創世の舞台裏で蠢く神と悪魔の意図を明かしてくれる。あなたももしかすると――どこか蛇の誘惑で禁断の知恵の実を口にしてエデンを追われたエヴァのように――知の誘惑に逆らえずに、このアマラ深界へと足しげく通い詰めてしまうかもしれない。

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覗き込むことで、喪服の淑女と車椅子の老紳士による劇場が開演する。この場面の演出はデヴィッド・リンチ作品的で奇妙かつ蠱惑的で素晴らしい。

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 黙示とは、秘密を明かすことだが、メノラーを持つ魔人たちもまた、ヨハネ黙示録になぞらえた神秘の存在。彼らを退けて手にしていくメノラーの輝きが増すとともに、喪服の淑女によって闇の奥の秘密が明かされていくアマラ深界への下降は、ヨハネ黙示録が暗示する世界の終りと、救世主の誕生をも予感させる。これは、ある意味で本筋であるボルテクス界での創世と対になるものではないだろうか。

アマラと死と再生の周期

 “アマラ”という語は、ラテン語では“輝き”といったを意味を持ちつつも、チベットでは母を意味する語でもあるという。またヒンドゥーでは不死を指す。
 太古より、母は大地になぞらえられ、農耕で命が生まれ来る大地や地下世界は母の領域とされた。同時に、死者は地下に埋葬されるため、死の領域ともされてきた。
 エジプトでは、太陽が西の空に沈み、再び東の空に昇る様子から、太陽は死と再生を繰り返す不死性の象徴ともされた。太陽の不死性がファラオに付与される以前の古代エジプトでは、太陽神ラーと死者の王であるオシリスは争っていたという。これはそのまま太陽の生命力が死の世界と密接に関連しており、死と再生を繰り返すイメージを想起させる。

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始まりの時に、先生が語る言葉。

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穴を通じて移動する表現は、臍帯のシンボリズムのようで母のイメージを彷彿とさせる。落下中は操作可能でアクション要素のあるミニゲームが楽しめる。

 かつて冥界=ハデスは“太陽の門”と呼ばれていたのであり、太陽の輝きと生命力は同時に地下の死者たちの復活を孕んだイメージを描き出すのである。太陽と地下の関係は、そのまま光と闇が交錯する二面性を描くものとも言えるだろう。
 つまり、本作におけるアマラ深界への下降もまた、ボルテクス界での創世の旅路とネガに反転した、誕生のための通過儀礼装置として機能するはずだ。

根源の混沌へ

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 アマラ深界の各層は、“カルパ”と名付けられている。カルパ=劫は、インド哲学や伝承における神話的時間の単位であり、循環する四区分された時代である四つの“ユガ”=432万年が千集まった単位。一カルパは古代インドの万物存在の根源である梵天“ブラフマン”の一日にあたる(ちなみに神の一生は、人の三千百十兆年)。インド哲学では、宇宙はこのカルパの終りごとに破壊され、再び再生するという周期的なリズムで、無限に反復するものと考えられた。
 こうした眩暈がしそうなほど茫漠たる神話的時間単位の規定は、社会や日常に流れる自己の時間、および歴史を滅却する。膨大な時間の果てでは、闇から光が分化される前の創造のエネルギーが沸き立っている。それこそは、始源の“混沌”にほかならない。インド哲学が追い求めたのは、あらゆる対立を超え、脱することであった。

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 あなたは物語の冒頭で、ボルテクス界で出会う金髪の少年によってマガタマを埋め込まれて悪魔と化すことになる。そのマガタマの名は“マロガレ”。マロガレとは、日本神話での世界創造以前の渾沌の意味でもある。

 見てきたように、アマラ深界への下降とは、光と闇に先行する未分化の渾沌からの誕生を黙示する、ボルテクス界と対になったもう一つの子宮なのかもしれない。Steam版『真・女神転生Ⅲ NOCTRUNE HD REMASTER』で、アマラ深界の底に待つものを知るべく、メノラーの灯の元――再び無限の如きカルパの穴に飛び込むのも悪くはないかもしれない。

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車椅子の老紳士の依頼で、名うての悪魔召喚師=デビルサマナーとして知られる“葛葉ライドウ”たちとの邂逅も待っている。

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