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逆ゲン担ぎ飛行機に乗り込む人たちなど/南山宏・ちょっと不思議な話

「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2017年6月号、第398回目の内容です。

文=南山宏

テロ〝リス〟ト

「わが国の発電・送電などを含む最重要インフラ設備を、今この瞬間にも壊滅の危機に曝す元凶は、敵対組織のサイバーテロよりも、見た目は可愛いリスたちだ!」
 本年1月17日付〈BBCニューズ〉によれば、サイバー安全対策専門家クリス・トーマス氏は、イギリス国内の停電事故の追跡調査結果に、自分でも驚いたそうだ。
 動物が原因で発生した停電事故は、2013年以降だけで1700件以上もあり、延べ500万人近い住民が被害を蒙ったという。
 内訳はリスの〝送電ケーブル齧り〟による停電がダントツで、879件と全体の半数を占める。
 次位が鳥類で434件、ヘビが83件、アライグマが72件、ネズミが36件、テンが22件、さらにカエルが原因の停電も3件あった。
 トーマスの主張では、2010年代にあったとされる米イスラエル共同開発のコンピュータウイルス〝スタクスネット〟によるイラン核施設破壊作戦も、動物の〝サイバー攻撃〟に比べれば、はるかに被害規模が小さかったとか。
 ただし、トーマスの統計が依拠したのは、被害防止対策が比較的行き届いた先進国のデータだけ。
 世界全体ではこの種の停電被害は、もっと遥かに深刻なようだ。


地獄直行便

 恐れ知らずの乗客たちは、文字通りの〝地獄行き直行便〟に、みんな嬉々として(?)搭乗した。
 本年2017年1月13日の金曜日(!)、フィンランド国営航空フィンエアのフライトナンバーAY666便(!)は、デンマークの首都コペンハーゲンから、フィンランドの首都ヘルシンキまで平常通りつつがなく飛行した。
 ちなみにヘルシンキ空港の手荷物コードは、頭3時のHEL(ヘル)すなわち〝地獄〟の意味にもなる。
 いささか蛇足ながら、〝13金〟を毛嫌いする恐怖症は、ギリシア語のパラスケヴィ(金曜日)とデカトリア(13)から、パラスケヴィデカトリアフォビアという。また〝獣の数字〟とか〝悪魔の数字〟とされる666に対する恐怖症は(舌がもつれないようご用心)ヘクサコシオイヘクセコンタヘクサフォビアというそうだ。
 もっとも、666が由来する新約聖書・ヨハネの黙示録では、この〝獣〟は人間自身をさすとか。
 たしかに悪魔の所業も平然とやってのけるひとでなしもいるものね。


タマネギ総選挙

 昨年6月7日付のAP電によれば、ルーマニアはドラグセニの町長選挙で、ヴァシリ・チェポイ氏がヴァシリ・チェポイ氏とヴァシリ・チェポイ氏を、最大1100票の大差で破って当選した。
 3人とも同姓同名だが、互いに血縁や縁戚関係はない。勝ったヴァシリ・チェポイ新町長は語る。
「私は混乱を避けるために、ヴァシリ・リカ・チェポイと、ミドルネームを入れて立候補した」
 みごと当選を果たしたチェポイ氏は現職の首長でもあり、これでドラグセニ町長を務めるのは、4期目ということになる。
 ちなみにドラグセニの総人口は約2500人だから、投票資格のない未成年者を除くと、1100票差というのは、同町の成人の大多数が、ヴァシリ・リカ・チェポイ氏に投票したことになる。
 なお、ルーマニアではヴァシリもチェポイもありふれた名前で、チェポイというのは〝でかいタマネギ〟という意味だそうだ。


待ちくたびれ損

「ものものしく武装した連中が、一軒家に集まっている!」
 2015年12月のとある早朝、米カリフォルニア州パームスプリングスの警察に、地元の住民からそんな緊急通報が入った。
 午前11時、緊急出動した警官隊は、現場に包囲網を敷いて、今か今かと突入命令を待ち受けた。
 さらにSWAT(特殊武装戦術部隊)が呼ばれ、二重にものものしい包囲網を作って待機した。
 15時間たっても、彼らはそのまま膠着状態だった。
 いつまで待っても状況に変化はなく、とうとうしびれを切らした誰かがドアをノックした。
 屋内は無人で誰もいなかった。


今ターザン

「さしもの豪州版ターザンも寄る年波には勝てず、ブリスベーン北方ギンピーのクーインダ老人養護ホームが、終の棲家となった」
 2015年9月、オーストラリア南部の各紙は、〝今ターザン〟とか〝珊瑚海の王者〟〝ウジャルウジャル(地名)の野人〟などと呼ばれて、1955年以来、地元住民に親しまれてきた野生の人マイケル・ピーター・フォメンコ氏の最近の消息を伝えた。
 マイケルは東欧の国ジョージア(旧グルジア)の元王族の娘とシドニーの伝統ある名門男子校、ショアスクールの教師の恋の落とし胤(だね)として、この世に生を享けた。
 生まれながらの自然児で、若い頃は「限界を試す」と世界でも屈指の過酷な土地クィーンズランドの荒野をねぐらに、フンドシ1丁で熱帯の陽の下、逞しい肉体の肌を灼きながら孤独に放浪した。
 裸の体を藪蚊の襲撃から守るため、夜間は灰を全身にかぶり、藪の中の隠れ家で眠ったという。
 1959年以降は、丸木舟の手造りに精魂を傾け、〝現代のオデッセイ〟を気取って海洋に乗り出すと、現インドネシア領パプアニューギニアのクックタウンからメラウケまで、危険きわまる600キロの海路を渡り切った。
 1990年前後からは、オーストラリア大陸の東北沿岸ケアンズの数百キロ郊外で、アボリジニを仲間に暮らすようになり、山刀でイノシシやワニを殺し、素手で海中のサメを撃退など、今ターザンらしく冒険の日々に明け暮れた。
 ときおり麻袋を担いでいつもジョギングで、食料や日用品の買い出しに近くの町々に現われた。
 ところが、2012年末以来ばったり目撃されなくなったため、死んだらしいとの噂が広まった。
 実際はその年末、病んだ体を抱えてシドニーの近親者の元を〝歩いて〟訪ね、そのまま前記の老人養護ホームに収容されたのだ。
 現在マイケルは齢(よわい)85歳、ホーム内の誰ともいっさい口をきかず、テレビや新聞のインタビューの申し込みもすべて拒否して、沈黙を守る孤高の日々を送っている。



(月刊ムー2017年6月号掲載)

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