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アマビエはダイヤモンド・プリンセス号だ! メディアが拡散した現代の予言獣/吉田悠軌・オカルト探偵

「早々私ヲ写シ人々ニ見セ候得」ーー悪疫を予言した獣として話題の「アマビエ」について、オカルト探偵・吉田悠軌が調査に乗り出した。その由来と、出現の意味に迫るなかで、驚きの「現代アマビエ」を指摘するーー。
驚天動地! 我々は、すでにアマビエを目の当たりにしていたのである。

文=吉田悠軌

アマビエは横浜に寄港していた

 新型コロナウイルス騒動の中、SNSにて話題となった「アマビエ」。
 災害や豊作を予言し、自分の姿を写し見せよと宣言する「予言獣」の一種である。今年2月末から3月いっぱいにかけて、Twitterを中心に、アマビエの自作イラストを発表することが流行した。 

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アマビエの絵(京都大学付属図書館蔵)。

 そうした一連のブーム、出典となるかわら版については周知されているため、もはや説明不要だろう。とはいえ、謎の存在「アマビエ」の正体とはいったいなんなのか……との疑問は残されたままだ。

 まず結論から言おう。
 アマビエとは、ダイヤモンド・プリンセス号だったのである。

 根拠は、その見た目だ。
 ダイヤモンド・プリンセス号の船首をよくご覧いただきたい。
 どこをどう見ても、これはもうアマビエの顔にしか見えないではないか。

アマビエとダイプリ

「アマビエ」でのグーグル画像検索

舳先はクチバシであり、船体は長い髪の毛を思わせる。(ダイヤモンド・プリンセス号写真=Wikipedia

 これだけでもう充分に納得されたかとは思うが、もう少し解説しておこう。

 今回のアマビエ・ブームは、元ネタの持つ絶妙な無意味さがキーポイントになった。ヘタウマというよりヘタヘタな、脱力感あふれるデザイン、「アマビエ」という謎のネーミングも、また人気を博した理由だろう。

 よく言及されるが、この名称については、湯本豪一氏の「アマビコの表記ミス説」が有力視されている。以前までは「アマビエ」なる予言獣がいると考えられてきた。しかし近年、「アマビコ」という予言獣の資料が多数発見されたため、名称としては「アマビコ」が元と考えられる。かわら版に書き写す段階で「コ」と「エ」を誤記したか、わざと名前を変えたのだろう……といった説だ。
 もちろん、これは妥当な推理だろう。ただ今回の騒ぎについて言えば、「アマビコ」という座りのよいネーミングでは、ここまで流行らなかったはずだ。「アマビエ」という、なにを表しているか意味不明の名だからよかったのである。

 また周知の通り、アマビエは疫病を予言し、「早々私ヲ写シ人々ニ見セ候得」と言ったものの、病気予防を約束した訳ではない。予言獣の多くは「自分の姿を(絵でいいから)見せれば、災いを免れる」と明言しているのに、残念ながらアマビエはそこが抜け落ちている。
 しかしそれだけに「写し、見せ、広める」という目的が純粋化されているとも考えられる。
 今回も確かに、アマビエ絵が「疫病封じになるらしい」と誤解(拡大解釈)した人は散見された。ただそれもあくまで「自作イラストを発表するための言い訳」に過ぎず、むしろ病気平癒など実際的なご利益に欠けているからこそ、気軽に参加できた人が多かったのではないか。

 ひるがえって受け手側にしても、「アマビエ絵を見たら病気にならない」という効用を信じて受容・拡散した人など、ほぼ皆無だろう。この流行のキモは、あくまでアマビエのイメージを思い思いにコピーして発信すること、それ自体にあった。別に新型コロナを封じるかどうか知らないが、とにかくアマビエが言うのだから仕方ないじゃないか。あの虚ろな表情で、「早く私を写して人々に見せろ」と。
 アマビエが重要な意味を持たない「ゆるキャラ」だったから、想像の広がりが生まれ、SNSでの気軽な参加を促した。

 その流れに乗じて、もう一度、断言させてもらおう。

 アマビエとは、ダイヤモンド・プリンセス号だったのである。

 顔が似ているだけではない。ダイプリの出身地は長崎だから、アマビエの目撃地である肥後国にも近い。アマビエ・アマビコの特徴である三本足と同じように、船尾に三つのスクリューがついている(船頭にも三つついているが、そういう細かいことはどうでもいい)。

メディアが拡散した予言獣

 これでも納得しないような疑い深い読者のため、もう少し言葉を足しておこう。

 先述通り、アマビエなどの予言獣は「写し、見せ、広める」ことに重きを置いている。
 もちろんそこには、「難を逃れるために、かわら版を買わせる」という不安商法の側面もあっただろう。とはいえそれだけでなく、個人が見よう見まねの肉筆画を描くことも多かった。
 彼らが予言する疫病のように、予言獣もまたコピーの増殖を目論んでいる(その点で、寺社の発行する疫病除け護符などとは、受容のされ方が少し異なる)。だからこそ、同じ「感染」の性質をもつ疫病への対抗手段になるのかもしれない。

 また予言獣は、「絵姿」という映像的コピーが重視されることが、今回のブームでも確認できた。いくらだってオリジナル画像の転載が出来る現代でもなお、わざわざ多くの人が自作イラストという手間を選んだ。当然、それによってコピーミス・変異が発生し、数多のバリエーションのアマビエが誕生していった(正面を向いたもの、美形化したものなど)。あたかも「コ→エ」という、言語の意味における誤解ではなく、文字の形という映像的コピーミスによって、アマビコからアマビエが派生したように……。

 こうした面もまた、感染によって変異を繰り返すウイルスと似ているようだ。
 伝染病は、見えない恐怖だからこそ、人々の不安を増長させる。その不安に対抗するため、人々はなんらかのイメージを映像化し、広めようとする。今回の騒動におけるアマビエもまた、そうした対抗手段のひとつだ。

 そして、アマビエにさきがけて人々に映像イメージを提供したのが、ダイヤモンド・プリンセス号だった。

 もちろん、それ以前にも国内感染者は確認されており、全国ニュースで報道されてもいた。しかし良く悪くもこの問題を「可視化」させたのは、横浜港に停泊する巨大クルーズ船という映像からだった。その後の対応には賛否両論あるだろうが、あの「絵」がテレビやスマホの画面に映され広まったことは、「絵」が無かった場合と比べて、人々の認知に及ぼした影響は大きいはずだ。それは社会全体における手洗い・消毒・マスクの奨励、つまり感染予防に多少なりとも寄与したのではないか。

 だからある意味で、ダイヤモンド・プリンセス号は現代における「予言獣の絵」だったのだ。しかも効果を明言せず、ただ「早く私を写して人々に見せろ」とだけ言ったアマビエにこそ似ているではないか。

 ……と、実はここまでもまだ、前置きに過ぎない。

 海に出現したアマビエが、人魚のような姿をしているのはご存知の通り。こと映像イメージにおいては、他の「猿っぽい」アマビコたちよりも、姫魚・神社姫といった「人魚っぽい」予言獣の影響が強いかもしれない。
 実は私はつい最近、そうした「海からきた異形のもの」にまつわる実話怪談を収集している。さらにまた、その体験談にまつわる「絵」を受け取り、話が「拡散」されたことが「アマビエ=ダイヤモンド・プリンセス号説」とも接続しているかもしれないのだが……。
 本題に入る前に、長々と文章を費やしてしまった。
 続きはムー連載「怪談解題」に譲りたいと思う。

アマビエダイプリ寄り

似ている。

*この続きはこちらで。


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