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「チカチカする庭」 /読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

チカチカする庭

神奈川県/木之下みどり(30歳)

 今でもときどき、その夢を見ては不快な思いをする家があります。それは神奈川県茅ケ崎市の北部にあった、私と8人の家族とが12〜13年間住んだ家です。
 古い民家で、私たち家族がそこに引っ越したときは、100坪はあろうかという庭に、食器や机、灰皿や火鉢といったあらゆる日用品が捨てられていて山積みにされており、当時まだ10歳だった私でさえとても奇妙に思えたものでした。そして私は、その家で暮らすようになってから急に、とても残酷な夢をしばしば見るようになったのです。
 あるときには縁先に石膏(せっこう)で固められた死体が何体も立っている夢を見ました。またあるときには、死体の詰められたダンボール箱の置いてある部屋を戸の隙間からそっとのぞき見たり、だれかがそのダンボール箱をひょいと手に提げて縁先へ歩いていくその途中に、箱の中からブラリと腕が垂れ下がるといった情景を見ているという夢も見ました。

 私は、そんな夢を見る自分を恐ろしい人間だと思って悩みましたが、だれにもいえずに過ごしました。ところが、やがて家族の中に次々と病人が出るようになったのです。まるで夢がそれらの異変を私に知らせていたかのように思えました。
 その家に住んで3年目、当時まだ3歳の妹が何度も急に喘息の発作を起こして死にかけました。翌年には母が腎臓結石を患って猛烈な痛みに苦しみ、同じころ祖母は脳軟化症になりました。
 その後やはり、父が脳血栓で倒れました。祖母の死から6か月ほどたったころでした。私自身も、しばらく胸部痛に悩まされたあげく、今も胸に三十針の傷跡を残す手術を受けなければなりませんでしたし、また父の入院中には妹と弟がバイクで事故を起こし、妹は大腿骨複雑骨折で6か月間、弟は踵
かかとの骨を砕いて1か月の間、入院生活を送りました。
 その間、喘息の妹もひどい発作のためしばらく入院していました。

 すべてがあの家に住んだせいだとまではいいませんが、しかし、これだけのことがあの家に住んでいる間に次々と起こったのです。

 私たちが、その家にまつわる、ある〝事情〞を知ることになったのは弟と妹の事故がきっかけでした。事故は自宅の近くの農道で起きました。50cc のバイクにふたり乗りしていたところ、白い乗用車がブレーキも踏まずに突っ込んできたのです。乗用車の運転手は酒を飲んでいたとのことでしたが、このとき初めて私たちは、その加害者が、私たちの住んでいる家を除く、周囲のすべての土地の持ち主だと知ったのです。

 不思議に思ったのは、そのときでした。私たちの住む家は、その人の家から徒歩1分と離れていないのです。その人の家は昔からの大地主で、ほかにもたくさん土地はありました。にもかかわらず、本当に目と鼻の先のその土地だけをなぜ人の手に……という疑問でした。
 大地主の旧家ともなれば、私たちが住む土地まで、かつては庭かあるいは納屋のようなものがあって敷地内に含まれていたとしてもなんら不思議はないところです。売る気なら、もっとほかに適した所がたくさんあったはず……。

 そんな疑問をもとに私は、自分たちの住む家についていろいろと調べはじめました。が、何もわからぬうちに私たちは引っ越さなければならなくなりました。父が倒れたことがその原因でした。
 ただ、私たちが引っ越す寸前になって、裏の庭の竹林にいっせいに白い花が咲き、それは見ていて無気味なほどでした。死の気配というものがあるのなら、まさにそれでした。
 縁側の天井裏で迷い猫が死んで、それがやがて猫の体形に白く塩を吹いたようなシミになって天井板に浮き出てきたのもそのころでした。
 またゴキブリが信じ難いほどに大量発生して、私たちの頭を発着場にして飛び交ったり、風呂場にヒルの大群がうごめいているのをみて大騒ぎしたりしたのもちょうどそのころでした。今、思いだしても体が震えるくらい怖ろしい日々でした。
 引っ越してから、ひとつだけ聞いた話では、私たちが住む前にその家に住んでいた人たちは大変に親子の仲が悪く、息子さんが両親を捨てて出てしまい、父親は「電気がチカチカする」などわけのわからぬことを叫びつづけながら息を引きとったということです。

 そういえば私の父も倒れたとき、同じように目がチカチカすると訴え、何度も庭を指さしそこを掘ってみろといっていたこともありました。今となってはもう何も知ることはできませんが、あの家には、何かあるに違いありません。

(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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