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樋上いたるインタビュー 怪談で作画集中! ホラー・オカルトへの愛と創作意欲
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樋上いたるインタビュー 怪談で作画集中! ホラー・オカルトへの愛と創作意欲

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感動的なシナリオと美しい絵で“泣きゲー”と呼ばれるジャンルを生み出した『Kanon』『AIR』『CLANNAD』。一連の作品は京都アニメーションでアニメ化され、大ヒット作になった。
これらの名作で原画を担当した樋上いたる氏は、実は、ホラーやオカルトに造詣が深いことでも知られ、さらには「ムー」の熱心な読者でもあるのだとか。
そこで、本誌では単独インタビューを敢行。「ムー」への愛と、ホラーゲーム制作への熱意を余すところなく語っていただいた。

文=山内貴範 #ムー民クリエイター
協力=樋上いたる

心霊・ホラーに浸った思春期

――樋上いたる先生がオカルト好きで、しかも「ムー」の読者と聞いて、正直驚いています。樋上先生が関わってきた作品には、泣ける、感動的な内容というイメージがありますが。

樋上:そういうイメージを持たれることが多いんですが、うちは子どものころから大のオカルト好きで(笑)。特に、心霊系の怖い話が大好きでした。「ムー」を熱心に読んでいたのは、中学生から高校生の頃かな。オカルト系の特集があれば手当たり次第に雑誌を買っていましたし、漫画もホラー漫画ばかり読んでいましたね。高校時代に深夜に放送されていた『デモンズ』というゾンビ映画も好きで、真っ暗な部屋で見ては興奮していました。

――どうしてオカルト好きになったのですか? 幼いころに何か不思議な体験をしたとか、テレビ番組がきっかけになったとか?

樋上:気づいたころから好きになっていたので、直接の理由はわからないんです。タイトルまでは覚えていないのですが、1990年代は特番でも心霊系のテレビ番組が多かったので、影響されたのかもしれません。

1キョンシー背景付a

「キョンシーがめっちゃ好きなんですよ」と話す、樋上氏。中国風の衣装や、カンフーアクションも好むため、『幽幻道士』などの映画は常にチェックするという。曰く、「キョンシーの映画はうちの好みが凝縮している」のだそう。(イラスト=樋上いたる)

最新作「幻想牢獄のカレイドスコープ」が12月17日リリース!

――「ムー」で印象に残っている記事はありますか?

樋上:10代の頃は心霊写真などの特集が好きでしたね。その後、一時期離れていたこともあるんですけど、最近、また自分の中で「ムー」のブームが来ていて。「ムー」のアプリゲーム(配信終了)は、ランクを上げるために必死でプレイしましたよ。『超ムーの世界R』も見ていますし、イラストを描くときに作業用BGMとしても聴いていますね(笑)。三上丈晴編集長がテレビに出たときは、「わ~~! 三上編集長が出てきた~!」って、興奮してしまうくらいです。

――樋上先生が考える、「ムー」の魅力ってなんでしょうか。

樋上:ホラーやオカルト好きな人って、うちの周りにいないんですよ。でも、「ムー」が出版不況の世の中でも残っているのは、ファンが一定数いる証しだと思います。「ムー」が出版され続けていれば、こういう世界が好きなのは自分だけじゃないんだと思えて、仲間の存在を実感できる雑誌ですね。

怪談で集中力が上がる!?

――いくつかの会社を経て、ビジュアルアーツで立ち上げたゲームブランド“Key”で『Kanon』『AIR』『CLANNAD』などを次々にヒットさせています。いずれも、“泣きゲー”と呼ばれる感動的な物語が反響を集めましたが……とくに「ムー」的な、オカルトの作品ではないですよね……?

樋上: Keyに在籍していたころ、ホラーゲームにはまりだしたんですよ。Keyのメンバーは仲が良くて、お互いに好きな作品を紹介し合うこともあったんですが、うちがホラー好きと知って、メンバーがいろいろなホラーゲームを教えてくれたんですよ。お気に入りは『零 zero』という、廃屋敷の中を幽霊を倒しながら進んでいくゲーム。何週やったかわからないくらいやり込みました。

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美少女ゲーム雑誌『電撃萌王』で連載していたコラムで描いた、ゾンビの女の子の絵。ホラーに特化した内容で、樋上氏がこれまでに見たホラー映画や、USJのホラーナイトのレポートなど、様々なネタを綴った。(イラスト=樋上いたる)

――『零 zero』は、数あるホラーゲームの中でも屈指の怖い作品として有名ですよね。樋上先生が関わった作品とのギャップが凄いです。

樋上:うちは、感動的な場面の絵を、怪談を聴きながら描いていましたよ(笑)。シナリオライターさんは感動的な音楽を流すことが多いようですけれど。

――『CLANNAD』の感動的な場面も、怪談をエネルギーに生み出されたのですか。まったく作業がはかどる気がしないのですが……

樋上:え、そうなんですかね? 友人の原画家さんも、作業をしている時も怪談を聴いていると言ってましたよ。

――怪談で集中力が上がるんですね。

樋上:少なくともうちはそうですね(笑)。自分のテンションを上げることが大事ですから。今でも、怪談を流して作業することが多いです。

――具体的に、どんなジャンルの怪談がお好きなのでしょうか。

樋上:怪談は、昔から幽霊物を聴きますね。怪談師の田中俊行さんの『あべこべ』とか。ほかには大島てるさんや松原タニシさんの事故物件の話も好みですし、未解決事件の考察も好きですね。他にも、ダウンタウンの松ちゃんがやっていた『ぞっとする話』の寄せ集めなど、結構手広く聴いてますね。

2樋上氏がイラストを描いている様子

インタビューは大阪の「なんばパークス」で行った。実はこの場所、樋上氏が関わった『Rewrite』の学校のモデルにもなった“聖地”でもあるのだとか(不覚にもインタビュアーはその事実をまったく知らず、この場所を指定した)。そんな“聖地”でキョンシー姿の自画像を描き上げた樋上氏。

オカルト・ホラーへの創作意欲

――そういえば、樋上先生と『Rewrite』でコラボをした竜騎士07さんが製作された『ひぐらしのなく頃に』も、発表当時から大きな話題になったホラーゲームですよね。

樋上:『ひぐらしのなく頃に』は、コミックマーケットで頒布されていた同人ゲームでしたが、周りから「これは面白いゲームだぞ!」という噂が耳に入っていたんですよ。その中の『鬼隠し編』がネット上にアップロードされたと聞いて、さっそくプレイしました。主人公がヒロインを惨殺する場面があって、怖さ以上にグロさの印象が強かったですね。でも純粋に面白くて、プレイ後に「これは凄い!」と思ったんですよ。それに、竜騎士さんがKeyのゲームをプレイしていると聞いて、コミケでご本人に挨拶に行ったこともあるんです。

――それはプライベートで、ですか? 凄い行動力ですね。

樋上:もちろん、一人のファンとして行きました。竜騎士さんはもう覚えていないかもしれませんが…… いろいろお話をさせていただきましたね。その後、竜騎士さんとは『Rewrite』でコラボできたので、嬉しかったです。

――竜騎士さんと一緒にお仕事をされて、変化はありましたか。

樋上:今まではシナリオに合った絵を描くのが仕事だったのですが、『Rewrite』の頃からは自分で企画も立てているんです。その過程で、ホラーゲームも作りたいなと思うようになりましたね。

――もしかして、今後、ホラーゲームを作る予定があるんでしょうか。

樋上:今年、2020年の12月17日に、竜騎士さんと一緒に製作した『幻想牢獄のカレイドスコープ』というゲームが出ます。このゲームはサスペンスものですが、次に自分が作りたいのは“心霊的なホラー”作品ですね。

――樋上先生の絵柄でホラーというと… “いたる絵”の大きな目から目玉が飛び出してくるとか、内臓が飛び出てきて血で染まるとか、グロテスクな描写になるんでしょうか?

樋上:さすがにそれは(笑)。数年前にゾンビとかキョンシーは描いたことありますが、可愛い女の子ありきなので、怖いイラストにはなっていないですね。むしろ、うちはグロいホラーではなく、じっとりとした日本のホラーという感じの作品が作りたいんです。そのためには、絵ももちろんですけど、“演出”を自分でやりたいです。

――演出はまさにホラーゲームの要ですよね。

樋上:例えば廃屋やダンジョンの中を進むゲームで、プレイしているうちにこの先に進むのが怖くなってくる心霊物がいいな、と思っています。そして、プレイした後にも、後ろを振り返ったりお風呂に入るのが怖くなったりする、“後を引く怖さ”を追求したいですね。ホラーゲームをプレイするときも、ここでこんな演出を入れたらめっちゃ怖いんじゃないかなと、いつも考える癖があるんです。だから、演出には結構自信がありますよ。

――それを実現させたら、樋上先生のクリエイターとしての集大成になるかもしれませんね。

樋上:でも、ホラーって企画を出してもなかなか通りにくいんですよね。これまでも需要がないと言われることが多くて。でも、同人ゲームから出た『コープスパーティー』は映画化されましたし、『ひぐらしのなく頃に』は今またアニメ化されていますよね。もちろんうちも、めっちゃ需要があるとは思いませんが、まったくのゼロだなんてことはないのになあって思うんです。だって「ムー」も、今こうして出ているじゃないですか(笑)。ホラーゲームを送り出すのは夢なので、ぜひ、実現させたいですね。

――恐怖のあまり、泣き出してしまうような“泣きゲー”を楽しみに待ちたいと思います!

4樋上氏自画像

樋上いたる(ひのうえいたる)
大阪府在住。3月1日生まれ。1999年から、ゲームブランドKeyで『Kanon』『AIR』『CLANNAD』『Rewrite』などの原画家として活躍、“泣きゲー”というジャンル作品を確立し、永く愛されるキャラクターを多数生み出す。2016年に独立し、現在はフリーのゲーム原画家・イラストレーターとして活躍する。


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