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「5歳の子供は」/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

5歳の子供は

神奈川県/左今和久(19歳)

 今から14年も前の夏のことでした。当時、私はまだ5歳で、東京の練馬にある建設会社の寮の2階に両親と住んでいました。
 ある夜、夕食後に父と一緒に花火を楽しみ、スイカを食べて、床に就いたのが8時過ぎでした。そして、トイレに起きたのが0時過ぎ。幼かったにもかかわらず、なぜか私は、その夜のことを妙にはっきり覚えています。
 トイレが階下にあるため、ねぼけて階段から落ちぬようにと母がついてきてくれました。母より先に階段を下りた私は、サンダルをはいて、土間へ下りようとしました。その瞬間から、実は、私の記憶はプッツリ途切れてしまっているのです。ただ、その直前、
自分の体がフワーッと浮き上がったような気がしたのは確かなのですが……。
 以下は、後日、母が話してくれたものですが、階段を下りてきた母は、私が外へ出て行くのを見て、外で用を足すのだろうと思ったそうです。それで自分もついでにトイレに入り、それから外へ出て私を捜したのですが、私がいません。部屋に戻って父に私がいなくなったことを告げると、父は、何を思ったのか階段を駆け下り、付近を捜そうともせず、いきなり川越街道のほうへ走り出したそうです。
 それから数十分後、父は私を抱きかかえて戻ってきました。
 父によると、私は寮から1キロあまり離れた川越街道にいたそうです。深夜とはいえ、車の流れの激しい道路です。どの車も60キロ以上のスピードを出しています。その流れの中を、まるで何かにとりつかれたように私は平然と歩いていたそうです。父は思わず私を抱き寄せて、頬を数回平手打ちしましたが、それでも私は気づかなかったといいます。部屋に戻り、布団に寝かせてからさらに平手で数回たたくと、ようやく私は気づきました。その瞬間、私の目に映ったのは、ゆっくりと、ぐるぐる回っている天井でした。
 それ以来、再びそんな目にあうこともなく、数年後には私たちは今の横浜に引っ越してきました。ところが、私たちが横浜に来て2年後のことです。私たちのあとにその部屋に入った人
から電話があり、やはり5歳になるその人の子供が私とまったく同じようになったといってきたのです。
 私は驚き、父に尋ねました。あのとき、なぜ父はすぐに私のいる場所がわかったのか。それはずっと気になってきたことでした。ということと、その知人からの電話を、まるで予測していたような父の態度の、理由を。
 父は話してくれました。
「実は、私たちが入る前にあの部屋に住んでいた人から、話を聞いていたんだよ」
 その人の、やはり5歳になる子供が体験したことを、そっくりそのまま私が体験したというのです。その人の前にもそんなことがあったらしく、あの部屋に住む者の間で、そのことが代々伝えられてきたのだと。だから自分もあの部屋を出るとき、次に入る人にそのことを伝えてきたと。
 その原因として考えられることがあるそうです。あの寮が建てられている場所はもともと沼で、そこで5歳の子供がふたり溺れて死んでいます。だからその子たちの成仏できない霊が、同じ年ごろの子供に乗り移って母を捜すのではないかというのです。でも、なぜあの部屋の子供だけがそうなるか説明がつかず、今ではあの部屋に住む人はだれもいないそうです。


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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