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オーロラUFO墜落事件と秘密結社ソノラ飛行クラブの謎/武田崇元

19世紀後半、アメリカ各地に謎の飛行物体が出没した。そして、ある秘密クラブのメンバーが残した膨大な数の奇妙な飛行物体のスケッチが明らかとなった。それらはUFOか、それとも謎の新兵器か?
そんななか、飛行物体の墜落事故が発生する。ーーはたして秘密クラブとの関係やいかに⁉

文=武田崇元

19世紀末の未確認飛行物体

 1896~97年当時のアメリカは、最新の科学技術がビジネスや家庭環境に変化をもたらし、世界に先駆け大きく「モダン」へと転換する時期にあった。電燈は暗闇を照らし、エジソンの蓄音機から流れる音楽が戸口から聞こえ、マーク・トゥエインは初めてタイプライターで原稿を書いた。大陸横断鉄道は3、4日の快適な旅で両海岸を結び、高層ビルが都市の光景を一変し、X線は新しい医療をもたらした。
「空」だけは未開拓の領域だったが、それでも近い将来、「空飛ぶ乗り物」で大空を安全に航行する日が来ると人々は確信していた。

 正体不明の飛行物体の跳梁はそんななかで突然起こり、西海岸から中西部にかけての広範囲で数千、数万の人々がそれを目撃した。

 最初の出現は1896年11月17日の夜、カリフォルニア州サクラメントでのことだった。その日は重い雲が垂れこめ、間歇的なスコールもあった。街路にはガス灯がともり、人々は家路を急いでいた。
 午後8時ごろ、東の地平線低くに不思議な飛行物体が現れた。明るく強烈な光が、寒々しい夜空に対してくっきりとした陰影をなしていた。
 それはゆっくりと町の上空を横切り、時おり市内のもっとも高いビルの上空数10メートルまで下降し、西の方へと去っていった。
 たまたま屋外にいて観察した人々は、大きく黒い本体に極度に明るい発光体が吊り下げられているようだったと述べた。

サクラメントのUFO

1896年にカリフォルニア州サクラメントに出現したUFOのイラスト。強烈なサーチライトで進路を照らしていた。

 多くの人々が物体の外観を葉巻型と形容し、何人かは巨大なプロペラがあり、下部の着陸装置に大きな梯子があったと証言し、ひとりは側面にフルトンの蒸気船のような車輪を備えていたと主張した。
 詳細はまちまちだったが、問題の物体が、冷たい夜空を切り裂くかのように、強烈なサーチライト状の光で進路を照らしていたという点は共通していた。小さな望遠鏡で観察したある目撃者は、それは強力なアーク灯だと主張した。それは30分ほどで暗闇のなかに姿を消したが、数百人におよぶ目撃者のなかには州知事の補佐官も含まれていた。
 それまでだれも夜空を堂々と横切る飛行物体など見たこともなかった。他に適切な表現もないままに、州のふたつの大きな新聞「サクラメント・ビー」紙と「サンフランシスコ・コール」紙はそれをairship=飛行船と表現し、無数の記事を発信した。
 一方、何も見なかった人々は酩酊や薬物中毒のせいにし、当時の俗語で「おバカなトムの与太話」(tom foolery)と片づけた。

edoison1蓄音機

発明王エジソンと彼が発明した蓄音機。19世紀末は、やがて来る科学技術時代の黎明期だった。

アメリカで続発したUFOの目撃報告

 だが謎の飛行物体は、1週間後、再びサクラメントに出現した。
 11月22日のサクラメントは1週間前と同じく、どんよりとして寒く、風はずっと強かった。
 それは日没後まもなく北の空に現れ、強風にもかかわらず、風向きに逆らいながら町に近づいてきた。この日は日曜日だったので、前回よりも多くの住民が目撃した。目撃者のなかには、保安官の助手と地区の検事長もいた。彼らは飛行物体が30分かけて西の地平線に消えていくまで見守った。
 その数時間後、謎の飛行物体は150キロ離れたサンフランシスコ上空に現れ、市長を含む数百人に目撃された。数人の目撃者は、海岸沿いの有名なクリフハウスレストランの上空で、それが地上に向けて強力なサーチライトを照射したためにアシカの群れがパニックになり海に飛びこんだと語った。
 まもなく謎の飛行物体は、北はシアトルから南はサンデイエゴにいたる西海岸全域に頻繁に出没するようになる。たとえば、11月25日の夜だけでも、謎の飛行体は11の都市や町で目撃された。

クリフハウス

サンフランシスコ上空で数百人に目撃されたUFOは、このクリフハウスレストランの上空でサーチライトを照射した。

 ところが、12月になると目撃談はぱたりと途絶えた。

 ところが翌1897年2月初め、遠くはなれたネブラスカ周辺で目撃が報告され、4月になるとテキサス、オクラホマ、カンサス、ネブラスカ、ダコタなど中西部一帯で頻繁に目撃されるようになる。
 4月5日の午後11時ごろ、ガスリーのアーリントンホテルのオーナー、トランボールは、町の上空を暗い物体が横切るのを見た。物体の前方からは強烈な光が発せられ、さまざまな方向を照射していた。トランボールはあわててまわりの人々に声をかけ、彼らは長時間にわたってそれを目撃した。形状は不明瞭だったが、物体は迅速に前進、後退を繰り返し、町の真北で地面すれすれまで降下したかと思うともの凄いスピードで上昇し夜の暗闇に消えていった。

 これ以降、テキサス州にかぎっても、4月14日はダラス以下4か所、15日にはグリーンビル、テキサスカナなど11か所、16日にはダラス他の26か所、18日には8か所、19日には12か所といった具合に頻繁に目撃された。

 しかし、4月下旬には目撃は数えるほどになり、5月12日にテキサ州フォートワースでの目撃を最後に途絶えた。

カナダのUFO

1897年春にテキサスに出現したUFO。まるで飛行船のような姿をしている。

錯綜する偽情報と尽きないホラ話

 一般には、これらの目撃談は当時の新聞のセンセーショナリズムの副産物で、そもそも謎の飛行物体など存在しなかったと説明されることが多い。
 いったん「謎の飛行物体を見た」というニュースが報道されると、大衆はその実在を信じ、目撃を待望するようになり、その結果、分別のある数千人がありもしない「飛行物体」を目撃し、それがまたニュースに反映されるキャッチボール状態になったというわけだ。

 だが、虚偽のニュースに触発されたとしても、10人やそこいらならともかく、数千人もの人が存在もしないものを見た気分になり、目撃を主張するというようなことがありえるだろうか。しかも記事の大半は実名報道で、そこには上院議員、判事、保安官、市長、弁護士、医師などの名士たちが多数含まれていたのだ。
 もちろん目撃談のなかに虚偽が混入していたことは疑う余地はない。一連の騒動に便乗して、退屈した住民がホラ話をでっちあげ、怠慢な特派員が見出しを飾って報酬をもらうために、それと知りつつ配信した場合もあっただろう。
 しかし、当時の新聞社が誤報に神経を使っていたこともまた事実である。
「ダラス・モーニング・ニュース」紙の4月20日号には、R・N・バット氏からのクレームが掲載されている。彼は数日前の記事に目撃者のひとりとして名前が挙げられていたが、「自分は何も見ていない」と抗議してきたのだ。このように当時の新聞社は誤報に対する指摘や抗議があれば、むしろ現代の新聞よりも、対応が早く誠実だったことは注目される。彼らは無責任に火のないところで煙を煽っていたわけではないのだ。

 疑わしい記事をすべて排除したとしても、合衆国の約半分の領域で何かが空を飛んでいたことはまず否定できないのである。

シカゴのUFO

1897年4月11日にシカゴに出現したUFO。このイラストでは明確に飛行船の形状で描かれている。

UFOの正体は飛行船だったのか?

 では、いったい何が飛んでいたのか。
 これについてはふたつの仮説がある。
 ひとつはいわゆるUFO現象との共通性に注目し、外宇宙から飛来したとする説、ひとつは時代に少しさきがけて開発された「飛行船」だったという説である。
 いまのところ、後者の「飛行船」説が有利な状況にある。

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