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唐人お吉の宿/西浦和也・裏話怪談

好きな人と、ふたりきりの楽しい旅行。……と、思っているのは本人たちだけかもしれません。
その部屋には、本当にだれもいませんか? たとえば、その、鏡の前に。

文=西浦和也 #裏話怪談  絵=北原功士

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西浦和也(にしうらわ)/自らの実体験から取材まで、膨大な不思議を集 める怪談蒐集家。トークライブなどイベント出演のほか、共著『現代怪談 地獄めぐり』(竹書房怪談文庫)など著書も多数。

河津の宿

 皆さんは「唐人お吉(きち)」という女性をご存じだろうか? 幕末から明治期に数奇な人生を歩んだ女性で、短期間ではあるがアメリカ合衆国・駐日領事ハリスのもとで仕えたのは有名な話だ。

 今から40年近く前、都内の専門学校に通っていたHさんは、当時付き合っていた彼女と遊びにいく計画をしていた。とはいえまだ寒い2月となると、自家用車を持っていないHさんの選択肢はあまり多くなかった。
 そんな時テレビで、伊豆の河津に早咲きの桜があることを知り、Hさんは週末彼女をつれだって河津に出かけることにした。 時刻表を頼りに東京を出発したが、思った以上に時間がかかり、着いたのは午後になってからのことだった。
 駅前はシーズンなのか結構にぎわっている。人の流れについていくと、川を挟んだ両岸に薄紫のたくさんの桜が鈴なりに咲いている場所に出た。
「わぁ、すごい素敵」
 目を輝かせた彼女が桜のもとへと駆けてゆく。思わずHさんも彼女の後を追った。
 桜や食事を満喫していると、すっかりあたりが暗くなっている。慌てて駅に向かったが、電車は出たばかりで、次まではかなり時間がある。時刻表を取り出し、調べると次は彼女が家に帰れないないことが分かった。
「仕方ないね」
 折角なので近くに泊まろうと、旅館の多い最寄り駅へふたりは向かうことにした。

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