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スクランブル視線/読者のミステリー体験
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スクランブル視線/読者のミステリー体験

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「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

スクランブル視線

東京都 36歳 伊藤直也

 もう今から7~8年前のことになります。当時、私の仕事の事務所は渋谷にありました。
 ある日の午後、事務所に行こうとJR渋谷駅前のスクランブル交差点で信号待ちをしていました。
 事務所に行くにはセンター街を抜けていく必要があります。そのため、私はそのときもセンター街のほうを向いて立っていました。

 そのときです。
 どこかからジーッと自分を見つめているような、だれかの視線を感じたのです。
 そっとあたりを見わたしてみましたが、視線の主はわかりません。
 気のせいかと思い、また前を向くと、再び視線を感じます。
 もう一度あたりを見わたすと、今度は視線の主がわかりました。
 交差点の右向こうの喫茶店近くの地下に下りる連絡口の横にいる男性が、ずっと私のほうを見ていたのです。

 しかし、私には、その人にまったく見覚えがありません。たぶんその人は自分の背後にいるだれかを見ているのだろうと思い、後ろを振りむいてみました。ところが私の背後にはだれもいません。不審に思いながら再び男性のほうに視線を向けると、その人はまだずっと私のほうを見つめています。

 季節はもう10月も終わろうとしているころでした。周囲の人たちはみんな上着を着ています。それなのにその人だけが青いワイシャツ姿なのです。そんなわけですから、まわりとの服装の違いがひときわ目立っていました。
 そうこうしているうちに交差点の信号が青に変わり、まわりの人たちがいっせいに動きだしました。
 そこで私もセンター街に向かって歩きだしながら、「あの男性、あの位置に立っていたということは、きっと駅に向かうんだろうなーー」などと考えていました。

 ところが、ちょうど交差点の中央付近に差しかかったころ、自分の右の視界ギリギリにさっきの男性の姿が見えたのです。私は、「きっと何か事情があって、方向を変えたのだろう」と、軽く考えて、そのまま足を進めました。

 しかし、次の瞬間でした。
 なんとその男性が突然、私の右前方に現れたのです。
 それも身をかわさないとぶつかってしまうというくらい近いところに!!

 私は驚き、あわてて身をかわしました。

 その瞬間でした。その男性が私にささやいたのです。
「へえ、見えるんだ……」

 驚いて立ちどまり、すぐに背後を振りむきました。ところが、なぜか男性の姿がありません。季節外れの服装なので、見失うことは考えられません。それに、なんの偶然か私の後方には女性ばかりで男性はひとりもいなかったのです。そのため私にはあの男性が自分とすれちがった次の瞬間に消えたとしか考えられませんでした。
 私は、真っ昼間の、それもまさに大都会の真ん中で、何と出会ってしまったのでしょうか!?

(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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