独居房/読者のミステリー体験
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独居房/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

独居房

栃木県 36歳 相沢信之

 私は、以前、死刑囚や無期囚といった凶悪な犯罪を犯した囚徒を収監し、施設内には死刑場もある、古い歴史をもつ刑務所で服役していました。
 刑務所では、通常、雑居と呼ばれる大部屋で10人前後が共同生活を送り、免業日という休日以外は施設内にある各工場に行って、朝の8時から夕方4時までさまざまな作業に従事することになっています。
 しかし、所内には処遇上独居と呼ばれるひとり部屋もあり、そこでは、所内で規律違反を繰り返すなど、集団生活ができない受刑者、あるいは社会的な重大事件を起こした者などを生活させています。
 私も服役中に一度、作業のことで工場担当係官といい争いをして処遇上独居に収監され、約1か月の間、毎日24時間ひとりで生活するという経験をしました。
 私は、その処遇上独居に入るときに、係官たちが、
「あの部屋に入れるか」
「そうですね」
 と、話していたことを、出所した今も忘れることができません。
 私は、霊的な現象や神仏に関心がなく、そういうことはまったく信じないほうでした。しかし、あの独居で自分が現実に体験したことを思いだすと、いまだに血が凍りつく思いがします。
 私が収監された独居は4舎2階にある、過去に3人もの自殺者が出たという部屋でした。3人とも無期囚で、夜な夜な自分が殺した人たちが枕元に立ち、いろいろと語りかけてくるといって、毎日、夜が来るのに怯えながら生活し、ついには自殺してしまったそうです。
 ひとり目、ふたり目の自殺者は昭和のころだそうですが、3人目は、私がその独居に収監される3か月ほど前でした。都内でひとり暮らしの老婆の首を絞め、包丁でメッタ刺しにして金品を奪った犯人でした。
 彼は集団生活ができずに、約6年間もその部屋で生活していたそうですが、仮釈放の希望もなく、毎日深夜に現れる被害者の霊に悩み苦しみながら、とうとう自殺してしまったとのことでした。
 私が、あの恐怖の出来事を体験したのは、いよいよその独居を出られることになっていた日の前の夜のことでした。その日の夕方、係官から明朝には独居から出られることを伝えられ、うれしくてなかなか寝つけなかったことを覚えています。
 やがて深夜になり、いつのまにか眠ってしまった私は、急にだれかに首を絞められる苦しさに目を覚ましました。見れば、なんと囚衣を着た中年の男性が、私の首に手をかけています。
しかも、天井に7人の男女の顔が浮かんでいるのです。男ふたり女5人だったと思います。私の首を絞めている男性は、しきりに私に、
「きみも来い、きみも来い」
 といっていました。
 私は、声もあげられず、体の上に重しでも乗せられているような感じで、手も足もまったく動かせませんでした。そして、あまりの苦しさと恐怖に、そのまま気を失ってしまったようでした。
「おい、起床だぞ」
 という係官の大声で目覚めると、すでに翌朝になっていました。
 これは私の推測ですが、私の首を絞めていた男と天井の男ふたりは、あの独居で自殺した無期囚で、5人の女性は彼らに殺された人たちなのではないかと思います。
 今は、ただ、彼らの冥福を心から祈るばかりです。


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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