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ナイジェリアの魔法使いとイギリスの魔法犬/南山宏・ちょっと不思議な話

「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2018年1月号、第405回目の内容です。

文=南山宏

魔法犬

 1930年代、フォーティアン現象研究の祖チャールズ・フォートが〝野性の才能(ワイルド・タレント)〟と呼んだ動物の不思議な能力に、飼い主の元に帰る犬や猫の帰巣本能がある。
 フォートは家具を片端から齧って壊す悪癖が疎まれて郊外に捨てられた犬が、嗅覚だけでは説明がつかない超感覚を頼りに、16キロも彷徨い歩いて帰ってきた実例に驚いて、〝魔法犬(マジシャン)〟と呼んだ。
 そんな魔法犬の最新例が、英国西ウェールズのペンリンコックのアラン&シャン・ジェームズ牧場にいる牧羊犬、4歳のペロ君だ。
〈BBCニュース〉2016年4月25日付けによると、頭と背中が黒くて腹が白毛のペロ君は、べつにタチの悪いワルさで手を焼かすヤンチャ犬というわけではない。
 ジェームズ牧場で生まれ育った牧羊犬16頭のうちの1頭として、3月初め、人を介してはるか北方のカンブリア郡コッカマスの農場に、番犬として貰われて行った。
 ヒツジを追い集めたり、新らしい飼い主の4輪バギーの後ろを走る、といった毎日を送るはずだったのだが、ひと月も経たない4月8日、なぜか急に牧草地を走り出すと、そのまま姿を消したのだ。
「穏和しくて忠順で、ヒツジ番にはうってつけの犬なんですけど」
 5児の母親のシャン・ジェームズ夫人(47歳)がそう庇うペロは、脱走して12日後、4月20日水曜日の夕刻、390キロも離れた自分の生まれ故郷ペンリンコックのジェームズ牧場に帰ってきた。少々片足を引きずり、ちょっぴり痩せてよれよれの姿だったが、体調にはこれといった問題もなかった。
 コッカマスからペンリンコックまで、ペロは平均日に32キロ強は歩かなければならなかったはず。
 しかも途中には、圏谷やU字谷の多い「湖水地方(レーク・ディストリクト)」が横たわり、バウランド森林地(フォレスト)という荒野やランカシャー旧産業地域の廃工場地帯もある。その先には険阻なスノードニア山脈も立ちはだかる。
 その全行路をペロが踏破したのは紛れもない事実だが、ちぎれんばかりに尾を振って体ごとぶつかってきた愛犬を抱き締めながら、夫人は信じられぬ思いだった。
「ペロがいなくなったことは知らされていました。だから夫が夕食後に戸口を開けて、ペロが座っているのを発見したときには、もう家中が大変な騒ぎになったわ!」
 夫のアランも付け加えた。
「ペロがどうやって帰り道を発見できたのか、完全に謎だね。きっとペロの頭の中には、天然の衛星ナビが仕込まれてるんだろうな」


今月のおバカで賞

 中国・陝西(せんせい)省安康(アンカン)の蒋博文(ジャン・ボーウェン)さん(仮名)は、これまで25年間、クルミの殻を叩いて割る手頃な道具に、それとは知らずにとんでもなく危険な代物を愛用していた。
 子供のころに畑で拾った重くて硬い鉄製品。それが手榴弾と知ったのは、警察が配布した〝所持厳禁危険物リスト〟のパンフレットに実物写真が出ていたからだった。


シャットダウン

 2016年4月29日の早朝、スイスのジュネーブ郊外にあるCERN(欧州原子核研究機構)の世界最大のLHC(衝突型円形加速器)が、突然機能を停止した。
 装置と6万6000ボルトの変圧器を接続する配線が、入り込んだムナジロテン(イタチの仲間)に噛み切られたのが原因だった。
 LHCは2009年にもシャットダウンしたことがあり、事故原因は鳥と推測されたが、その決定的な証拠は発見されていない。


1・0・1・0・1

 2016年12月12日の朝、米ペンシルヴェニア州フィラデルフィア市の各戸に取り付けられた金属製の住所用番号札のうち、1と0だけが多数入った白いゴミ袋が、メーガン・ヘーリー氏宅の玄関先に置かれているのが発見された。
 住所用番号札の内訳は、1が56枚、0が27枚、合計83枚だった。
 翌日付けのAP電によれば、ヘーリーは2015年9月頃、不審な若いカップルがこの界隈(かいわい)をうろつき回って、あちこちの番号札を盗んでいる様子を撮影した防犯映像を、インターネットで公開していた。
 番号札をわざわざ盗んでまた返却した窃盗犯の意図や動機は不明だが、ひょっとしたら当世流行りの〝インスタレーションアート〟とやらのつもりかもしれない。


太陽の双子

 ギリシア神話のネメシスは、神罰と復讐を司る女神だが、天文学上では、われわれの太陽を主星とする仮説上の双子星(伴星)で、おそらく小さな赤色矮星という。
 近年の天文学では、恒星の大半は複数で誕生するが、伴星たちは徐々に主星から離れて銀河系内に散らばった、とする仮説が有力。
 太陽系でもオールト雲(太陽系を包み込む最外殻部の小天体群)のさらに外側を周回する赤色矮星が存在するはず。それが太陽の双子の片割れ、ネメシスだという。
 ただし、この新仮説が提起されたきっかけを作ったのは、天文学者ではなく古生物学者だった。
 1984年2月、米シカゴ大のD・ロープとJ・セプコスキーが周期的大量絶滅の原因を地球外に求める研究論文を専門誌に発表。
 それを知ったD・ホイットミアら2人とR・ミュラーら3人の米天文学者2チームが、2か月後の同じ〈ネイチャー〉誌に、太古の地球に周期的大災厄を起こした元凶として、オールト雲を周期的にかき乱し小天体を太陽系内に送り込む仮説上の伴星を指摘した。
 それこそがまさに〝神罰と復讐の女神〟ネメシスというわけだ。


魔法使いの墜落

 ナイジェリアはデルタ州サペレのアロゴド川の橋のたもとに悠然と座っている見知らぬ怪しげな老人を、地元の住民が見とがめた。
 老人はこともなげに「わしは魔法使いである」と打ち明けた。
「この物質界では通常〝オオバコの葉〟と呼ばれる、わしの住む魔法界では高価な専用ジェット機に相当するもので、ベニン空港から飛び立ち、イギリスまで行く途中だったのじゃが、燃料切れになって橋に衝突してしもうたのじゃ。
 今晩中にはわしの仲間たちがやってきて、燃料を補給してくれるじゃろうから、イギリス旅行はまた続けられるじゃろうがな」

(月刊ムー2018年1月号掲載)


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