霊能力の謎を解く「幻視」の秘密! 知られざる「シャルル・ボネ症候群」/西風隆介
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霊能力の謎を解く「幻視」の秘密! 知られざる「シャルル・ボネ症候群」/西風隆介

18世紀、自らの「幻視」体験をもとに、すぐれた論文を書いた学者がいた。魔女狩りの嵐が吹きあれるなかで、彼は何を見て、何を考えたのか。歴史に埋もれた秘話をもとに霊視現象の謎とメカニズムを解明する!

◉超心理学最前線◉ 文=西風(ならい)隆介

霊能力現象の論文を学会に提出した男

 われわれ日本人には「霊視」として知られている超能力(霊能力)現象を、1760年に論文として著したスイス人科学者がいた。シャルル・ボネ(1720〜1793年)その人である。

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「霊視」についての論文を、すでに18世紀に発表していたシャルル・ボネ。

 日本では江戸時代中期に相当するが、ではスイスの文明が過度に発達していたのかというと、むしろ逆だ。当時のヨーロッパではまだ「魔女狩り」が横行しており、魔女裁判( 異端審問いたんしんもん)による歴史上最後の死刑者は他ならぬスイスで、1782年のことなのだ。

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当時のヨーロッパでさかんに行われていた魔女狩りの様子を描いた絵画。それはスイスにおいても決して例外ではなかった。

 シャルル・ボネは元来は博物学者で、アブラムシが単為生殖をするという論文をパリの科学アカデミーに提出したのを皮切りに、23歳という若さで権威あるロンドン王立学会(最古の科学学会)に入会を許されたほどの俊才だ。
 彼の論文は本にまとめられ、最初の著作『昆虫論』は1745年にフランスのパリで、1754年には『植物における葉の機能の研究』をライデン(オランダ最古の大学都市)で、各々出版している。
 こんな順風満帆の学者人生を歩んでいたかに思えたボネであったが、とある異変が(当時のヨーロッパでは口外しただけで命にかかわる世にもまわしきそれが)彼を襲うのだ。

「顕微鏡」に潜む魔物が幻視を引きおこした!

 博物学者ボネにとって、頼れる相棒は「顕微鏡」だった。動植物の微細構造を調べるには欠かせない。だがこれが、彼の異変の原因となった。
 読者も理科の実験などで、必ず一度は使ったことがあるだろう。その際、教師から厳重注意を受けたはずだ。
「反射鏡で太陽光を導いてはいけない! 失明してしまう」──と。
 光源として可変式のライトが内蔵された顕微鏡も最近では多い。その標準的な使い方は、左目でレンズをのぞき見て、右目で横に置いた紙をとらえ、そこにペンで描き写していく。とても疲れる作業で、小一時間ものぞき見れば目が疲労困憊ひろうこんぱいするのが常だったろう。

 さて、一枚の興味深い顕微鏡の切手を示そう。

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1740年に発行された切手には、イギリスのカルペパー型顕微鏡が描かれている。18世紀には日本にも長崎を経て輸入された。右下には光源となるロウソクの絵が確認できる。

 1740年とあるから、まさにボネが使っていた時代だ。顕微鏡の発明は1590年だが、このころになると機能的には現代と大差ない。
 だが、この切手のイラストの右下あたりを見ていただこう。細いアームがのびて、先に白い棒が立っている。これは何だろうか? ロウソクなの
だ! 顕微鏡は現代と大差なくても、まともな光源が存在しなかったのだ。
 ボネは、そのような劣悪な環境下で、10代後半から片時も休まずに顕微鏡をのぞき見てきた。昼間は明るすぎて目を痛めるし、夜は反対にロウソクやランプのうす暗がりのなかだ。目への負担が──とくにレンズを見る《左目》へのそれが── 熾烈しれつであったことは容易に想像できるだろう。そんな学者生活を20年ほど続けて、世にも忌まわしき異変に襲われはじめるのだ。
 最初は、ごく些細ささいなものであったはずだ。机に一輪の花が置かれている、といった程度の。だが花など置いた覚えはない。目を何度かしばたたせると、花はかき消えた。つまり幻が見えていたのだ。いわゆる「幻視」である。
 その頻度が、次第次第に増えていったのだ。大きいものや動物まで見えるようになり、あるとき床に猫がたたずんでいる幻視が見えた。家では飼ってない。それに猫は、もっぱら魔女の下僕として知られているではないか。
 そしてついには人影が見えるようになってきた。部屋の中に、ぬーと突っ立っているのだ。
 子供が見えたこともあった(小人や妖精かもしれないが)。そんな大小とりまぜて人影が見えるのだ。もうこうなってくると「サバト」と呼ばれる悪魔崇拝の集会さながらだ。しかも彼に生じたこのような異変を端的に表す言葉が、当時のヨーロッパにはあった。
 すなわち「悪魔き!」だ。

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