
縄文土偶を読む! 正体は「植物の精霊」だった!/権藤正勝
土偶といえば、ユニークなスタイルの人形(ひとがた)の像を思い浮かべるが、そのモデルは人ではなく、〈植物〉の精霊だという新しい説が登場した。その根拠は何なのか、そして、縄文人が〈植物〉の精霊としての土偶に込めた思いとは何なのだろう。
文=権藤正勝
三上編集長による解説動画
土偶は擬人化された〈食べ物〉だった!
今、一冊の本が大反響を巻き起こしている。本の題名は『土偶を読む』。人類学者の竹倉史人氏による著作である。題名のごとく、土偶のモチーフに関して、新解釈を提示した内容となっている。

『土偶を読む』竹倉史人著 晶文社発行/定価:1870円
土偶とは、縄文時代の日本列島で作製されていた土を焼き固めた像である。形態的には、手足を持った人ひと形がたを取るものを土偶と呼ぶが、その顔つきやスタイルは、人間とは似ても似つかないものが多い。
多くの土偶は、膨らんだ乳房やお腹を持っており、女性の生殖機能を強調している。このことから、土偶は妊娠女性や地母神像を表しているとする説が一般的である。故意に破壊された土偶があることから、安産や豊穣、繁栄などの願いを込めた信仰や儀式に結びついていると考えられている。
土偶にはさまざまな顔や姿かたちのバリエーションがあるが、これらは人間の特徴をデフォルメしたものとされ、土偶の表面の文様も縄文人の文身や衣服を表しているとされている。一般的には、土偶の文様や形が、人間以外の特定の事物と結びつくとは考えられていない。
ところが竹倉氏は著書の中で、これに真っ向から異を唱えている。土偶のさまざまな特徴は、彼らの食事、特に植物と結びつくというのだ。土偶は、人間を表しているものではなく、植物の精霊を表していると主張している。
植物の精霊というと、ナシの精「ふなっしー」を思い浮かべる読者も多いと思うが、いわば土偶は、縄文時代の「ご当地キャラ」というわけである。
つまり、人間をデフォルメしたものではなく、擬人化された食べ物が土偶だったのだ。

ナシの精として人気沸騰のふなっしー。土偶はこのような縄文時代のご当地キャラだったのかもしれない。©ふなっしー
顔に特徴がある木の実の精霊
竹倉氏は著書の中で、さまざまな類型の土偶と植物の類似を詳細に比較し、土偶が縄文人の食生活に結びついていたことを明快に説明している。本の内容に沿って、順に見ていくことにしよう。