身投げ寸前/読者のミステリー体験
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身投げ寸前/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

身投げ寸前

兵庫県 32歳 三好広明

 バイト先の同僚から聞いた話です。彼の友人が引っ越しをしたのですが、日中、彼は都合が悪くて手伝いに行けませんでした。夕方、友人に渡されていた地図を持って新居に向かう途中、真冬だったため、日が落ちるのが早くて少し迷ったそうです。
 ようやくそれらしきマンションを見つけた彼は、その建物に近づきながら友人が住むことになった部屋の階を何気なく見上げました。するとその階の廊下の手すりの柵から上半身を乗りだすようにして両腕をたらしたまま下を向いている女性が見えました。顔は長い髪がかかっていてよく見えませんでしたが、まだ若い女性のようでした。

 ──まさか、身投げ!?

 彼は思わずドキッとして女性を見つめました。でも彼にはどうすればいいかわかりません。しばらくそのまま女性を見上げていましたが、女性に動きはありません。彼はとにかく友人の部屋まで行ってみることにしたそうです。

 玄関を入り、エレベーターに乗りました。そして友人の新居のある階に着きました。
 エレベーターを降りた彼がエレベーターホールからそっと廊下を覗くと、あの女性がさっきと同じ姿勢のまま彼のほうに顔を向けていました。
 白いワンピースを着ていて、顔は青白く、まったく生気がないように見えたそうです。しかも本来なら両目のあるあたりが、まるでえぐり取られたかのように黒くなっていたといいます。

 怖くなった彼は思わずその場に立ちつくしました。すると次の瞬間、その女性が手すりから身を起こし、そのまま滑るように彼のほうに向かってきたのです。
 幸いエレベーターはまだその階に停まっていました。彼はあわてて乗り込み、必死に「閉」のボタンを押しました。ゆっくりとドアが閉まる瞬間、女性の姿がチラッと見えたそうです。

 彼はマンションの玄関から走りでるとその建物が見えなくなるまで走り、電話ボックスを見つけて飛びこみました。そして友人に電話をかけ、
「行けなくなった」
 とだけいいました。するとなぜか友人は理由も聞かずにあっさりと、
「うん、わかった」
 といって電話を切ってしまったそうです。彼は何やら腑に落ちないものを感じながらその日はそのまま帰りました。

 友人が、彼が行けなくなった理由を聞かなかったわけを話してくれたのは翌日のことです。
「おまえのすぐ後ろで女性の笑い声がしていたからだよ。てっきり彼女といっしょなんだと思ってね」

 前日の出来事と、彼女などいなかったことを話した後、怖くなったふたりはそのままお寺に行くことにしました。なぜこのような出来事が起こったのかを相談するためです。
 住職さんによると、女性の霊はマンションではなく電話ボックスのほうにいて、波長の合った彼を呼び寄せたのだろうということでした。

(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

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