
ソコロUFO墜落現場と謎の駐屯地/保江邦夫・UFO墜落現場探検記(4)
湯川秀樹博士の最後の弟子にして武道家、そして伯家神道の祝之神事(はふりのしんじ)を授かったという異能の物理学者・保江邦夫氏は、もうひとつ「UFO研究家」の顔を持つ。20余年前に材質に関する研究報告の専門誌「バウンダリー」(コンパス社)に連載されていた「UFO調査」がここに復活!
文=保江邦夫 前回はこちら
前回までのあらすじ
1994年4月アリゾナ州セドナで開かれた国際会議での出会いをきっかけに、筆者一行はUFO調査の冒険へ繰り出すことになる。
調査の中で、アメリカ大陸の先住民を指導していたノルディック宇宙人のアナサジの存在や、現在エリア51と呼ばれる場所がもともとは彼らの地下施設であったこと、来たるアナサジの地球帰還へアメリカ政府が備えていることを確信する。天文学や素粒子物理学の発展のために建設されるはずだった巨大な電波望遠鏡や超伝導粒子加速器などが、宇宙人対策のものであった……! 3人は、物理学者としての良心に揺り動かされて一路ソコロからロズウェルを目指す。
ソコロのUFO墜落事件
灼熱の砂漠での酷使に耐えられなくなったリンカーンのタウンカーを修理に出した私達は、赤いフォードのエクスプローラーに乗り換え、ハイウェイ25号線を南下していきました。マリーがエリア51リサーチセンターからもらってきたニュースレターの中に見つけた墜落現場への道順を追うように、147番出口で25号線を下りていきます。道順の起点はモーテル6の玄関前になっていましたが、確かにフリーウェイの出口からモーテル6の看板が見えていました。しかし、このニューメキシコ南部の田舎では、この看板も必要とされてはいないようです。荒野のどこからでも2階建てのモーテルの建物が見通せるのですから。
私はマリーが読み上げる道順のとおりに、モーテル6の前から州道1号線を南へと車を進めました。
「先生、右側に空港があって、それを過ぎて最初の道を右折とあるわ」
その言葉どおり、ほどなくエクスプローラーの行く手前方右側に古いセスナが何機か止めてあるボロボロの飛行場らしき広場が現れました。
「こいつはすごい。幽霊のための飛行場かな?」
助手席のスコットの言葉に頷きながら、私はスピードをゆっくり落としていきました。
「ねえ先生。右折できそうな道、ある? 後ろの座席から見る限り、この道と交差している道なんて、まったく見あたらないけど……」
「マリーのいうとおりだ。いったいどこに他の道があるというんだ?」
2人の指摘したように、確かにエクスプローラーの高い運転席から見渡す限り、荒れ野の中にはこの真っ直ぐな1号線しか走っているようには思えません。
「そうだな、いくらゆっくり走っているとはいえ、もう空港を過ぎてからだいぶ来たと思うんだが。変だな……」
私の独り言にも似た生返事は、しかしスコットの威勢のいい呼び声にかき消されてしまったのです。
「クニオ、あれだ!」
スコットの指差すほうに目をやると、荒れた赤土の野原の中にジープの轍のような跡が何本も1号線に直角に延びていっていました。道というには無理もあるのですが、この荒れ果てたニューメキシコの土地に慣れ始めていた私達の目は、少し小高くなった丘へと緩やかに湾曲している轍の跡を見逃すことはありません。
「うん、どうやらこれが交差している道のようだ。行ってみるか」
そう言いながら、私はエクスプローラーの前輪をジープの轍に合わせるようにしてゆっくりと進んでいったのです。
意外にしっかりとした地盤を咬むようにして丘を登り切ったところで急に牧場の建物が目に入ってきたかと思うと、獰猛そうな2匹の大きな猟犬が吠え立てながら私達のほうに突進してくるではありませんか。それと同時に、左手の奧に見えた大きな納屋の戸が開き、中から黒い長い物を脇に挟んだ年寄りが出てきたのです。
「クニオ、やばいぜ。どうも、誰かの牧場に入り込んでしまったらしい。アメリカじゃあ、不法侵入でズドンと撃たれても仕方ないとしか言えない状況だ。あの納屋から様子を窺っている男が抱えているのは、どう見たってショットガンかライフルだぜ。ここは、スマイル、スマイル。そうだ、マリーが後ろに乗っていることが向こうからわかるような位置に車をゆっくりと止めてくれ」
スコットの指示に従って、私はすぐ側までやってきて吠え立てるドーベルマンを刺激しないように、ゆっくりとエクスプローラーの車体を横に向けてエンジンを切りました。
「大丈夫かしら?」
後ろから心配そうに声をあげるマリーには簡潔に「大丈夫だよ」と告げ、私は運転席の窓ガラスを下ろして納屋の入り口にいる年寄りに声を掛けました。
「すみません、どうやら道に迷ってうろうろしているうちに入り込んでしまったようです」
老人がちらりと脇にある母屋を見やると屈強そうなカウボーイ風の男が勿体つけた様子で出てきます。老人はそれを見届けてからゆっくりとした足取りで注意深くこちらに向かってきました。カウボーイ風の男は母屋の横手に立ち止まったまま、手を腰にやってこちらを眺めています。スコットが、あちらには聞こえない程度のボリュームで叫びます。
「クニオ、頼むぞ。両方から挟まれてしまった」
老人は我々の車からは少し離れたところで立ち止まり、車内を見やった上で尋ねてきました。
「道に迷ったって、あんたら、どこへ行くつもりだったのかね。このあたりで俺の牧場の他にあるものといやあ、ラジオ局のアンテナ施設と陸軍の予備役用の駐屯地くらいのものなんだがね」
ソコロUFO墜落現場と謎の駐屯地/保江邦夫・UFO墜落現場探検記(4)
300円
