「トイレの花子さん」の声/読者のミステリー体験
見出し画像

「トイレの花子さん」の声/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

「トイレの花子さん」の声

千葉県 22歳 森野衛

 私が小学校2年生のころの出来事です。
 当時、私の学校には理科室の前にある男子トイレに「花子さん」が出る、という噂がありました。そういう話を信じやすい子だった私は、その噂話を聞くたびに、非常に恐怖を感じたものです。
 もっとも、はじめのうちは、子供の好奇心で、そんな噂も面白半分で楽しんでいたのですが。
 そのころ、私の学校ではあるゲームが流行りました。ジャンケンで負けた子がひとりでトイレに入り、みんながそのドアを外から押して出られなくしたうえで、
「いっちょうめ~のはーなこさん、にーちょうめ~のはーなこさん」
 という、あの有名な花子コールを唱えるのです。
 しかし、そのうちみんながそんなゲームに飽きて、やらなくなったころの、ある日の昼休み中のことでした。私は、全身の毛穴からドッと冷や汗が噴きだすほどの恐怖体験をしてしまったのです。
 とても明るい午後でした。私は教室の近くにある、あのトイレに入りました。そのとき、たまたまほかにだれも入っていなくて、私ひとりしかいませんでした。
 そして、なにげなく用を足していると──なんとその最中に、いきなり、ゾッとするような声がトイレ全体にこだましたのです。
「ダ~レ?」
 低い、しゃがれたような、大人の女性の声でした。しかも、まったく抑揚のない、不思議な声で、とても生きている人間の声のようには思えませんでした。
 まるで、異次元から無理やり届けられた音のように虚ろで、そのくせ強い、はっきりとした声でもあったのです。しかも、その声は、トイレの中の個室のほうからではなく、私のすぐ耳元で聞こえました。
 その瞬間――私は、お腹の中が真空になったような感じがして、体中からあらゆる力が抜けてしまいました。足がガクガクと震え、頭の皮が熱されるような感覚と、ものすごい恐怖が全身を貫通し、声も出ませんでした。
 それでも、なんとかフラフラとトイレの外に逃げでた私は、今、自分の身に起きたことの説明を見つけようと、すぐに周りに不審な人(たとえば私を驚かせようとしたイタズラっ子など)がいないか調べてみましたが、それらしき者はひとりもいませんでした。
 もっとも、あとになって考えてみれば、あれは、はっきりと、大人の女性の声だったのです。30歳くらいのようには感じられました。私と同じ小学生が、どんなに頑張って工夫しても、あんな声が出せるはずがないのです。今でも、あのときのことを思いだすとゾッとします。
 ちなみに、私が行っていた小学校には「太郎君」という霊の噂もありました。
 こっちは、校内の給食を運ぶエレベーターの中に入って遊んでいるうちに事故が起きて命を落としたという子の霊ですが、その学校でそんな事故があったことは事実で、私も全校朝礼中に、校長先生が私たちに注意を与えているのを聞いた記憶があります。
 学校の怪談の背後には、意外に実際に起きた不慮の事故などがからんでいることも多いようです。ただ、トイレで聞こえた声の正体は、今も謎のままです。


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)

★「ムー」本誌の特集やオリジナル記事が読めるウェブマガジン「ムーCLUB」(月額900円)の購読はこちらから。


この続きをみるには

この続き: 0文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
マニアックなロングインタビューや特異な筆者によるコラム、非公開のイベントレポートなど、本誌では掲載しにくいコンテンツを揃えていきます。ここで読んだ情報は、秘密結社のメンバーである皆様の胸に秘めておいてください……。毎月30~40本投稿あり。

ムー本誌の特集記事のほか、ここだけの特別企画やインタビュー記事、占いなどを限定公開。オカルト業界の最奥部で活動する執筆陣によるコラムマガジ…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ムーPLUS

ネットの海からあなたの端末へ「ムー」をお届け。フォローやマガジン購読、サポートで、より深い”ムー民”体験を!

ムー民ですね!
スーパーミステリー・マガジン「ムー」の公式サイトです。 ウェブマガジン「ムーCLUB」にて極秘情報を配信中。世界の謎と不思議をご案内します。 ※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを禁じます。